公式HPより
【石原壮一郎の名言に訊け】~三浦知良
Q:くだらない話に聞こえるかもしれませんが、自分にとっては深刻な悩みなんです。朝、トイレに行くじゃないですか。そのときにスッキリ出るかどうかで、その日の気分や仕事への意欲が大きく左右されてしまうんです。半端な出方をした日は妙にイライラするし、出なかった日なんて気分がドーンと沈んでミスも多くなります。「定期便」の結果を気にしないで一日を過ごすには、どうすればいいんでしょう。(愛知県・27歳・自動車販売)
A:けっして、くだらない話ではないと思います。むしろ、時にはくだったりするという話ですね。いや、すいません。たしかに、しっかりした形状のものがスッキリ出てくれると、底知れない多幸感に包まれます。しかし、多幸感にせよ物足りない思いにせよあくまで一瞬のもので、ほとんどの人は朝の結果を一日引きずることはないでしょう。
スッキリ出た日は、爽快でアゲアゲな一日を過ごせるわけですよね。問題は、そうじゃない日をどう乗り切るかです。もしかしたらあなたは、スッキリ出せなかった自分を「ダメなヤツ」だと否定し、そんな一日には価値がないと考えているのではないでしょうか。世界最年長のプロサッカー選手であるキング・カズこと三浦知良選手は、こう言っています。
「人生には良いときも悪いときもある。大きな実績をあげれば自信がつく。挫折したときでも、そこからはい上がることで踏ん張る力が身につく。栄光と挫折の両方を経験することで、人は大きく成長していけるのだろう」
人生は「スッキリ出た日」ばかりではありません。スッキリとした実績を支えに自信をふくらませるのは、大いにけっこうです。しかし、あなたを成長させてくれるのは、むしろ「スッキリ出なかった日」ではないでしょうか。「今日はスッキリ出なかったけどがんばろう」と思うことで、踏ん張る力が身につきます。踏ん張る力が鍛えられれば、その分、明日の栄光をつかむ可能性も高まるでしょう。スッキリ出る日もあればそうじゃない日もあるからこそ、大きく成長できるのです。
「自分は『朝の結果』なんてすぐ忘れるから関係ない」と思いながら読んでいる人もいるかもしれませんけど、それはとんでもない心得違い。相談者はたまたま「朝の結果」にこだわり過ぎる癖があるというだけで、誰しも過剰にこだわってしまう要素を持っています。「上司に嫌われたから俺はもうおしまいだ」と落ち込んだり、「大きなミスをした自分はすっかり信用を無くした」と絶望したり、あるいは学歴に引け目を感じ続けていたりするのも、広く言えば「朝の結果」を引きずるのとたいして変わりません。
カズはこうも言っています。
「常に何かに挑戦していれば輝きは失われない。挑戦してその結果が成功だとか、失敗だとかではない。挑戦したときがもう成功といえるのではないだろうか」。大切なのは結果に縛られないこと。そして挑戦し続けること。スッキリ出ようがイマイチだろうが、トイレに腰を掛けて挑戦した時点で、今日もそれなりに健康な状態にあるという「成功」を手にしています。たとえいい結果が出なくても、胸を張って会社に行きましょう。がんばっていれば、運は必ずそのうちやってきます。
【今回の大人メソッド】
トイレがらみの名言に「カミに見放されたものは、自らの手でウンをつかめ」というのがあります。挫折や失敗に直面すると、カミに見放された気になるかもしれません。しかしそんな時でも、私たちには自らの手でウンをつかむという方法が残されています。挫折や失敗に意味を見い出そうとするのは、ウンをつかむための大人の生活の知恵と言えるでしょう。
【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(
@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。
いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『
大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『
食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、最新刊は、今日からすぐに使える大人のフレーズが身につく『
大人の言葉の選び方』(日本文芸社)