しかし、森友学園よりも不誠実なのはむしろ財務省だ。財務省が2月10日に野党各党の調査チームへ配布した説明資料には、問題の土地が、土壌汚染対策法に基づく要措置区域に指定されていた経緯について、一切触れられていない。先述の通り「地下埋設物は、廃材及び生活ごみ」であるとの説明があるのみだ。
財務省からの説明を受けた民進党の議員に確認したところ、財務省の担当者は口頭による補足説明でも、「(地下埋設物は)木屑、ビニルなどの『家庭ごみ』と説明するだけ」だったと言う。
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=129406
しかしこれは不思議な説明だ。もし、財務省担当者の言う通り、地下埋設物が「木屑、ビニルなど」程度のものであれば、その撤去費用に8億円もの費用がかかろうはずもない。念のために筆者は、問題の土地の住宅地図と財務省が提出した土地鑑定書をもとに、複数の業者に費用感をヒアリングしたが、どの業者も「現場を見なければ判断できないが」と前置きをした上で、「数億円かかる作業とは思えない」との感想を述べている。無論、現場特有の特殊事情を考慮せず図面と鑑定書だけで費用を判断することはできないだろうが、やはり常識的に考えても8億の撤去費用は高額と言わざるを得ないだろう。
むしろ「地下埋設物の存在を理由とした値引き」の正当性を主張したいのであれば、「木屑、ビニルなどの『家庭ごみ』」など持ち出さず、「森友学園に売却した土地は、ヒ素等が検出され、土壌汚染対策法に基づく要措置区域に指定されていた経緯があり、土壌改良工事を行う必要があり、8億円の費用がかかった」とむしろストレートに説明した方が説得力がある。
しかしなぜか財務省はそうしなかった。野党議員には、問題の土地で「鉛及びその化合物・砒素及びその化合物」が発見された事実があることは一切説明されていない。筆者の取材に応じた別の野党議員の一人は、「ヒ素が出た土地だなんて、財務省は一切言わなかった。こうなると財務省の説明は一切信用できない。極めて不誠実な対応だ」と不信感をあらわにした。
このように、8億円もの大幅値引きの根拠に関する説明は、やはり不誠実であり不明確と言わざるを得ないだろう。
こうしてみると、やはり財務省・文科省の公開した説明資料には、齟齬や漏れの多いもののように思われる。
本欄では、この土地取引の不自然さと、森友学園が申請した「瑞穂の国小学校」の設置認可の顛末の不透明さについて、引き続き追及していく。ご期待願いたい。
<文/菅野完(Twitter ID:@
noiehoie)>
※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、
『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中