吉田 恒氏
7日、フランス銀行主催のシンポジウムにおいて米利上げ開始で金融市場が混乱するリスクをイエレンFRB議長などが警告したことについて、複数で報道された。それにしてもこれは、米中間選挙が終わったタイミングの影響も大きいのではないか。
例えば、11月8日付けブルームバーグ「利上げ開始時には金融市場の混乱も-各国の中銀総裁が警告」という記事によると、注目された主な発言は以下の通り。
イエレンFRB議長「(金融政策の)正常化は金融の不安定さの増大につながる可能性がある」。
ダドリー・NY連銀総裁「(米利上げが)ある程度の市場の混乱を伴うことは間違いない」。
以上のような、米超金融緩和見直しに伴う金融市場の混乱リスクへの警告が大きく注目されるようになったのが、米中間選挙という大きな政治イベント終了直後だったのは偶然だろうか。
過去にも、米国の大統領選挙や中間選挙といった重要な政治イベントを前後し、政策が「豹変」した印象を与えることがあった。代表例は1996年11月米大統領選挙のケースで、選挙終了後円安容認の否定や、そして株高容認の否定、当時のグリーンスパンFRB議長による有名な「根拠なき熱狂か」発言が飛び出した。
この1996年米大統領選挙の例は、重要選挙という政治イベント前にはなるべく金融市場混乱の波風は立てないようにすることが不文律であり、選挙終了で一気にその不文律が解除されたといった具合にも受け止められるものだった。
米金融緩和見直しが金融市場を混乱させるリスクをFRB関係者などが警告する動きが、中間選挙終了直後に注目されたのは偶然だろうか。政治への影響を配慮し、選挙終了まで自重していたFRB関係者たちが、2016年の大統領選挙まで2年間の政治的猶予期間の中で、超金融緩和のもたらした「行き過ぎたリスクテイク」といったバブル是正の軟着陸を目指し動き出した可能性はないだろうか。(了)
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【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に
『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など
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