牛丼を筆頭にデフレ外食産業のメニュー高級化に未来はあるのか?

 牛丼をはじめとする低価格の外食チェーンは、財布の中身が心許ない我々庶民の頼もしい味方だ。ところが、このところやたらと値の張るメニューを推してくる気がしないだろうか。

牛丼「吉野家」は去年12月から今年5月まで販売した「牛すき鍋膳」を再発売、今年は一足早く10月末から投入している。その値段、牛丼300円に対して630円(税込)。「松屋」は7月に「プレミアム牛めし」(税込380円)を発売し、それはいいのだが、それに伴って“普通”の「牛めし」(税込290円)の販売を終了することになった。

「餃子の王将」では、一部店舗限定で発売していた「極王シリーズ」という通常メニューより3割程度高い商品がグランドメニュー化され、また一時期「100円マック」で盛んに集客していたマクドナルドにしても、W杯などにかこつけてことあるごとに期間限定の高額商品を打ち出してくる。

 貧者に優しかった“彼ら”が、揃いも揃って一体どうしたというのだろう?

「ちょうど話のタネにロッテリアの『飛騨牛ハンバーグステーキバーガー』(税込1300円)を食べに行こうと思ってました」という経済評論家・平野和之氏は次のように語る。

「簡単に言えば、それしか“デフレ外食産業”が生き残る道はないんです。牛丼チェーンなどはデフレ時代に低金利で借入して次々と出店、拡大することで、低価格でも利益を出していた。ところが円安、物価高で原材料費が上がり、脱デフレ傾向の中、人件費や店舗賃料も上昇している。かといって単純に値上げするだけでは客が離れてしまう。客単価を上げるために付加価値をつけた高価格のメニューが必要不可欠になるわけです。そもそもデフレのワンコインランチ時代においても、牛丼の300円以下というのは異常。損益分岐を考えれば、牛丼店の昼夜平均客単価は700~800円が常識的な数字です」

「牛すき鍋膳」は前回の販売時には1400万食を売るヒット商品となり、松屋も14年上期は前年比で売上を伸ばしているので、今のところは高価格メニューにも一定の支持はあるよう。こうした外食の“プチぜいたく化”の潮流については、コンビニエンスストアがその先駆けとなっているという。

「ローソンは09年にプレミアムロールケーキを発売して、『コンビニでそんなニーズがあるのか?』という予想を覆して大成功を収めた。この流れに外食産業が続き、ファミレスのロイヤルホストは高価格&本格指向のメニュー提供で業績を回復しました。低価格競争に追われてこの流れに乗り遅れた牛丼チェーンなどは負け組になっていましたが、ようやく動き出したということです」(平野氏)

 また「餃子の王将」の場合、「極王シリーズ」以外にも、主力商品の餃子を6年振りに値上げするかわりに、原材料を純国産化することで「安全・安心」をアピールするなど、価格以外の部分で活路を見出そうとしている。中には東京五輪の開催に向けて増加が見込まれる訪日外国人のニーズに対応するため、フランス料理やトルコ料理のメニュー提供などというプランもあるという(産経新聞10月30日)

「王将でフランス料理なんて食うか!?」という声も聞こえてきそうだが、そんな“斬新”なアイディアが求められるほど、今日の“デフレ外食産業”が将来に危機感を感じているということなのだろう。

 もちろん経営が立ち行かずに潰れてしまっては元も子もないわけだが、とはいえアベノミクスによる景気回復はまったく実感できないとの声も少なくない。松屋が“値上げ”した際には、「もう行きません」「プレミアムじゃなくていいから値段を戻せ」といったコメントがネット上では見られた。

 ファストフードチェーンには、デフレ時代の成長を支えてきた貧乏人を見捨てることなく、安価なメニューの提供も変わらずに続けてくれるよう是非ともお願いしたいところだ。<取材・文/杉山大樹>


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