ベトナム国内で大きな論争を呼んだ若き両雄の日本移籍1年目の挑戦は終わった。
果たして二人のJ2挑戦は失敗だったのだろうか。「プロは試合に出場してなんぼ」というシビアな考え方をすれば、失敗と言わざるを得ない。
但し、アジア戦略での地元スター獲得にはビジネス的な側面が必ずついて回る。その意味では、両選手の獲得により、ベトナムにおける両クラブの知名度は飛躍的に上がり、水戸はスポンサーまで獲得できたのだから一定の成功は収めたとも言える。
重要なのは、この動きを継続できるかどうかだ。まだ21歳という若い2人が日本のクラブで過ごした1年で学んだものは大きかったはず。帰国した際のインタビューでは、2人とも日本の環境の素晴らしさやハードワークを怠らない日本人選手のプロ意識の高さについて語っており、選手として成長するためにも、日本に残りたいと話していた。
一方、ベトナムのファンとメディアは“黄金世代”をアイドル視して溺愛するあまり現実を見ていない節がある。
出場機会が巡ってこないことについて、選手自身がまだ自分の不足している部分を自覚して客観的にコメントしているにもかかわらず、ファンとメディアは過度な期待をかけるだけかけ、失敗の責任をチームやJリーグ側に押し付けている。
それは過保護というものだ。海外志向の高い彼らを無理やりベトナム国内に縛り付けておくのは、今後のベトナムサッカーにとって大きな損失になりかねなない。ずっと以前から言われていることだが、ベトナムには長期的な視野というものが欠けていると感じずにはいられない。
<宇佐美 淳>
1981年生まれ、愛知県出身、ベトナム・ホーチミン在住の翻訳家兼ライター。2005年にベトナムに渡り、5年間日本語教師として語学センターや大学で教壇に立った後、2011年にベトナム情報配信サイトの運営会社に就職して編集長を務め、2014年に退社。在職中の2013年にベトナムサッカーの専門サイト「
ベトナムフットボールダイジェスト」を立ち上げ、現在も個人で運営を続ける。「
アジアサッカー研究所」や「フットボールチャンネル」などでコラムを連載中。
【アジアサッカー研究所】
東南アジアを中心としたアジア新興国と日本およびアジアの国々のさらなる発展のために、各国の取り組みをリサーチし、関係者に共有し、さらなる価値を創造していくことを目的として、人材開発とコンサルティング分野など、日本とアジアのサッカー交流を加速させるプロジェクトとして活動している。
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