ここまで見てきた3つの“中小企業の失敗の形”に共通することは何でしょうか?私は、「経営者の規律の欠如」だと思います。
業績が下がっているのに自分の身を切って報酬を下げられないのも、数字が示す現実から目を背けるのも、お金の公私混同をするのも、元をただせば社長がリーダーたる自覚に欠け、自分を律しきれなかったことが原因です。このことが、私が「(企業の)失敗の形はどれも似たもの」だと考える理由です。
欧米のビジネス書を読むと、discipline(規律、しつけ、自己訓練)という単語をよく目にします。それだけ、ビジネスに携わる者のけじめの大切さを知っているということでしょう。日本のビジネス界では、特に強調されることは少ない“規律”という概念ですが、長時間労働の是正や生産性向上など、今後日本の産業界が直面する課題を考えたとき、ひとつのキーワードとして重要性が増す概念ではないかと感じています。
今回ご紹介した3つの要素のうち、ひとつでも自社の社長に思い当たる節があれば、注意した方がいいかもしれませんね。
【多田 稔】
中小企業診断士、経営アナリスト。「多田稔中小企業診断士事務所」代表。経営コンサルティング・サービスに携わる傍ら、「シェアーズカフェ・オンライン」などで企業分析・会計に関する記事を執筆