ジョン・レノンの名言――孤独なクリスマスの乗り切り方

写真/Junpei Abe

【石原壮一郎の名言に訊け】~ジョン・レノンほか

Q:今年もまた、いまいましいクリスマスがやってくる。テレビを見てもネットをのぞいても、浮かれたヤツらが浮かれたことを言っている。自慢じゃないが、俺は今までの生涯で楽しいクリスマスなんて過ごしたことはない。はっきり言って、クリスマスが憎い。「リア充爆発しろ!」と本気で思っている。マスコミなのか世間なのかは知らないが、まんまとのせられてはしゃいでいるヤツらの気が知れない。(栃木県・29歳・製造業)

A:たしかに、無闇やたらなバカ騒ぎや、盛りのついたカップルがここぞとばかりに発情する様子は、「おいおい」と思わされます。今さらですけど、キリスト教徒でもないのになぜクリスマスを祝って喜んでいるのか、そんな根本的な疑問も払しょくできません。

 今まで楽しいクリスマスを過ごしたことがないあなたが、クリスマスを憎み、リア充の爆発を願う気持ちは、痛々しいほど、いや痛いほどわかります。そこまで心乱されるということは、浮かれてはしゃいでいる人たちが、きっとうらやましくて仕方ないわけですよね。街もメディアもクリスマス一色のこの時期は、さぞツラいことでしょう。

 しかし、すでにクリスマスは、完全に日本の年中行事のひとつになっています。あなたがいくら憎んでも、いくら力を込めて罵倒しても、その巨大な存在感は揺るぎそうにありません。憎むのは自由だし、それはそれで「大勢に流されない自分」を確認できる楽しさはありそうですけど、どうせならもっと貪欲にクリスマスを活用してみてはどうでしょうか。

 あのジョン・レノンはこう言いました。

「弱い人たち、強い人たち、金持ちの人たち、貧しい人たち、世界はこれでいいとは思わないが、ともかくハッピークリスマス」

 世界にも自分にも今の状況にも何かと不満はあるでしょうけど、「ハッピークリスマス」と口にすることで、ひとまずチャラにしてしまいましょう。人類の偉大な発明のひとつであるクリスマスには、後付けの都合のいいきれいなイメージのおかげで、そういう効能もあります。作家のオーレン・アーノルドも、こう言いました。

「クリスマスプレゼントの提案です。敵には許しを、競争相手には寛大さを。友には心を、顧客にはサービスを。すべての人に慈悲を、すべての子どもたちには良き先例を。そして自分自身には尊敬の念を」

 ふだんは日常の雑事に追われて、したほうがいいとわかっていてもできないことがたくさんあります。特別な日とされているクリスマスは、いつもはなれない「いい人」になれるチャンスかも。俳優でコメディアンのボブ・ホープが「時代遅れであろうがなかろうが、私の考えるクリスマスとは、とてもシンプルなものだ。他の人を愛すること。考えてみると、それをするのにクリスマスまで待つことはないね」と言っているのも、意味は同じです。

 どうせ逃げられないなら、悪あがきはやめて、懐に飛び込んでしまうのも一興。クリスマスに崇高な意味を見い出してしまうことで、バカ騒ぎしたり発情したりしているリア充どもより優位に立った気になれそうです。それに、ここぞという場面で「クリスマスっていうのはさ」とこういう話をすれば、どんな女性もイチコロのはず。錯覚でも妄想でもかまいません。クリスマスはもともと、そういう要素で成り立っているんですから。

【今回の大人メソッド】

鷹揚に受け入れてみると懐が深そうに見える

 クリスマスにせよバレンタインデーにせよ、ケチのつけどころはいっぱいあります。だからといって、素直に罵倒の言葉を吐いたりアンチの立場を取ったりするのは危険。それは大人としていささか安易な姿勢だし、心が狭いチンケな人間に見えがちです。あえて鷹揚に受け入れて、強引に活用する姿勢を示すことで、心の広さや懐の深さを見せつけましょう。

【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。

いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)

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