今までのペースで国債の買い入れを続けていたら、消費税が10%に引き上げられる予定の’19年には日銀の国債保有額は650兆円に達し、総発行残高の6割以上に達する見込みでした。それをファイナンスするための日銀当座預金は550兆円。これはさすがに持続不能と考えたのでしょう。
こうした支離滅裂な政策と事実上の緩和縮小で、市場では徐々に円高・株安圧力が強まっていきました。そのなかで、トランプ旋風が神風のように吹いたのです。アメリカの長期金利の上昇に伴い、日本の10年債利回りも上昇しましたが、たまたま9月に導入した「指値オペ」で日銀は金利上昇を抑制することができました。この結果、日米金利差拡大から、さらにドル買いが進み、円安効果で日本の株高も進んだ格好です。これは長期的な視点に立てば、日本の国民にとっては不幸な出来事です。円安・株高が日銀の金融政策の追い風となり、デフレ政策であるマイナス金利の問題点を見えにくくしてしまったからです。
トランプの経済政策は完全に“アメリカ優先”であるため、今後、日本経済が受ける恩恵は決して大きくないと考えます。トランプ効果と日銀の金利抑え込みで円安トレンドが続くでしょうが、景気は浮揚せずに輸入物価が上昇する“悪い円安”が進み、消費者が割を食うことになる可能性があります。経済活動のインセンティブを生み出し、経済成長率を引き上げるためには適正な金利が不可欠なのです。
闇株新聞氏はトランプ効果と日銀の金融政策により、日米金利差が拡大して、一段と円安が進むと予想
【闇株新聞】
’10年に創刊。大手証券でトレーディングや私募ファイナンスの斡旋、企業再生などに携わった後、独立。証券マン時代の経験を生かして記事を執筆し、金融関係者などのプロから注目を集めることに。現在、新著を執筆中