さらに問題は「ギヤ比」や「排気量」だという。
「林業に理想的なのは、低ギヤ比で、大排気量V型8~12気筒自然吸気式、高速走行は不向きで燃費が悪くても、低回転でトルクの落ちないエンジンとミッションの車両です。一方、長距離用のトラックなどは、高ギヤ比で中排気量直列6気筒+ターボ加給式で、高速道路を低回転+低燃費で巡行出来るエンジンとミッションで、用途によって使い分けが可能でした。しかし、排ガス規制やオフロード法(※特定特殊自動車排出ガスの規制等に関する法律)、生産コストの関係で大型・小型、用途を問わず『小排気量+ターボ+高ギヤ比化』に統一されたんです。このクリーンディーゼルターボの普及で都心部付近はNOxの低減含む排気ガスの浄化には成功していると思いますが、林業には不向きな車になってしまったんです」
というのも、林業では斜度のある山道を材木を積んだ状態でエンジンブレーキや排気ブレーキ(排気ガスの排気抵抗でエンジンブレーキの効きを強化するディーゼルエンジン車特有の装置)を効かせながら走らせることが必要だという。そのため、排気量が3000ccのターボ加給式ばかりになってしまったことで「排気ブレーキ」の効きにも大きな差が生じてしまうのだ。
さらに、最近の四駆トラックは悪路走行用に設計されていないので『地道での積載登坂走行は壊れるので禁止』になっているという。
もちろん、材木を運ぶ林業専用機などもあるが、これらは足回りはゴムキャタピラで、長距離&短時間運搬にはとても耐え得る仕様ではないことや、それ以上に高価すぎて一般の林業家にはそうそう手が出ないことや、他の用途に使いまわしが効かないなどのデメリットもあるという。