労働者の被曝を闇に葬る、電力業界の「ブラックな手口」

杜撰な安全管理、ブラックなもみ消し

島根原発

島根原発で梅田さんが梅田さんが作業したとされる個所。労災認定裁判で国側が提出した証拠書類より作成。実際は圧力容器の内側にも入って作業しているが、そのことは書類上には記録されていない

「安全教育?作業前に簡単な説明はあったけど、放射能のことなんて何も聞かなかったよ」と梅田さんは述懐する。 「安全教育をまともにやると、2割くらいの人は作業に同意せずに帰ってしまう。すると、工期が2倍に伸びる。会社はそれを嫌がるんだね」  不十分な安全教育もあって、梅田さんは短期間に高線量の被曝をしたのだった。敦賀原発での作業後、長崎大学のホールボディカウンターで内部被曝検査を受ける。当時のカルテを後日精査したところ、梅田さんの体内から放射性のマンガン、鉄、セシウムなどが検出された。  九州大学病院にも診てもらって症状を訴えたが、「被曝との因果関係は明らかではない」という診断書を出された。 「その間、元請け会社である日立プラントの総務課長が同病院を訪れていることが後にわかったのですが、一体何をしに行ったのでしょうか」  全身の倦怠感など、被曝によるものと思われる症状に悩まされた梅田さんは、労災認定を申請しようとした。その途端、見知らぬ人から「おたく、息子がおるんやろ?」などと脅迫めいた電話がかかってくるようになる。ヤクザ風の男にもつきまとわれ恐怖を覚えた梅田さんは、労災の申請を諦めざるを得なくなった。  2000年に急性心筋梗塞を発症したことで、梅田さんはついに労災申請に踏み切ったが、2010年に不採択となった。再審査請求も棄却されたため、労災認定を求めて国を相手に訴訟を起こしたのだ。
次のページ
国の陰に隠れる電力業界
1
2
3
4
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会