稲田朋美防衛大臣は、「財源のない子供手当ならば、軍事費の増大を」と主張していたという。明治の改軌論争になぞらえば、「軍主子従」ともいうべき立場だろう。子供の予算よりも軍事費をという主張が、感情的な反発を生むのは無理からぬこと。しかし、一蹴すべき議論とは言い切れない。不測の事態に備えて防衛設備を増大するべきだという主張は大いに検討されるべきであろう。日々困難な任務に当たる自衛隊員の処遇改善も必要だ。
その意味では、稲田大臣の主張そのものは、国家の安全保障を万全なからしむるために展開されたものだと理解することも可能ではある。
だが、彼女の配偶者が防衛関連企業の株を大量に取得している事実は見逃せない。彼女が軍事費の増大を主張することは直接的に彼女の経済的利得に繋がる。これほどあからさまな「自分の財布への利益誘導」もなかなか珍しい。これでは「我田引銭」ではないか。
後藤新平も原敬も、立場の違いはあれ、鉄道会社からの金銭供与を強く戒めたという。癒着が明るみになればどんな主張でも説得力を失うのを知っていたからだ。明治の伝統がお好きな稲田大臣ならば、その顰に倣い即刻、職を辞すべきではないか。
参照:
参議院インターネット中継
<文/菅野完(Twitter ID:
@noiehoie)>
※菅野完氏の連載、「草の根保守の蠢動」が待望の書籍化。連載時原稿に加筆し、
『日本会議の研究』として扶桑社新書より発売中。また、週刊SPA!にて巻頭コラム「なんでこんなにアホなのか?」好評連載中。