メキシコで殺害、誘拐、恐喝、麻薬密売など犯罪が多発しているのは、先述した通り、麻薬組織カルテルとそれに関係した暴力組織が蔓延っているのがその最大の要因である。9つの主要カルテルを含め、45のカルテルと88のグループから成る暴力組織が存在しているメキシコである。
ペーニャ・ニエト大統領も、就任後の2013年1月から今年末までに5900億ペソ(3兆円)を投入して治安の安全を確保するために取り組んでいる。しかし、その成果は実っていない。米国市場で麻薬の売買が発展している限り、カルテルを取り締まることは難しいという要因もある。しかも、連邦警察官や軍人の一部そして政治家の中にもカルテルと癒着している者がいる関係から、中央政府が治安の安全を図ろうと努力しても、それが功を奏しないのが現状なのだ。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。