いまNTTに注目する二つの理由
2014.08.16
米ニューヨークダウが史上最高値を更新するなか、日経平均株価は足踏みを続けている。株価の面で注目される企業はどこか。金融の第一線で活躍するプロが、最も注目するメルマガとして知られる「闇株新聞」を直撃した。
――闇株新聞が注目している日本株の銘柄はどんなものがありますか?
「まずはNTTからお話ししましょう。総務省電話局が上場しているようなNTTですが、ここにきて注目する理由は二つあります。
一つ目は別にNTTの努力とは全く関係がありませんが、最近になってウォーレン・バフェット氏が、米ベライゾン・コミュニケーションズ株式を5億ドル保有していることが明らかになりました。
米国の通信会社ではベライソンとAT&Tが圧倒的2強で、それぞれ地域電話・長距離電話・国際電話・データ通信のフルサービスを提供し、携帯電話会社もそれぞれ傘下にあります。
ベライゾンとは旧AT&Tから分離された東海岸の地域電話会社が大きくなったもので、AT&Tとは同じく分離された米国南部の地域電話会社が大きくなり弱体化した旧AT&Tも買収して社名変更したものです。
つまりどちらも独占会社だった旧AT&Tの設備・技術・顧客・知名度・信頼を受け継いでおり、今後も安定的な成長と潤沢な現金収入が見込めるとバフェット氏も判断したようです。
この2社に相当する会社が日本ではNTT。つまりNTTが自覚しているかどうかはともかくとして、ほんの少しだけ目覚めれば格段に素晴らしい会社になるのです。
NTTに注目する二つ目の理由は、NTTが光回線サービスを通じて他の通信会社に卸売りをすると発表したこと。ようやくNTTが少しだけ目覚めて攻撃に転じたように、私には思えます。
現在のNTTの株価水準はPER12倍、PBR0.8倍、配当利回り2.8%と“成長しない金持ちの会社”の株価です。いわば、眠れる巨象。これが少しだけ目覚めただけで評価が一変するのです」
――NTT以外では、いかがですか?
「日本最大、世界第3位の総合化学会社にしては過小評価の三菱ケミカルも気になります。三菱化学、三菱レイヨン、三菱樹脂、田辺三菱製薬などを傘下に持つ世界的な総合化学会社で、5月13日には産業ガス大手の太陽日酸を1000億円で買収すると発表しました。この売上高を加えると4兆円となり、米デュポンを上回り独BASF、米ダウ・ケミカルに次ぐ世界第3位の売り上げの総合化学会社となります。
ところが三菱ケミカルの時価総額はデュポンの10分の1の6300億円しかありません。確かに利益もデュポンの10分の1ですが、現在の三菱ケミカルの株価水準はPER16倍、PBR0・7倍、配当利回り2.8%で、やはり“全く成長していない会社”の株価です。
いくらなんでも売り上げが世界第3位の総合化学会社にしては“大変に失礼な株価”と言うべき水準で、あまりにも低すぎます。
――実力のわりに評価されていない。
「現在の株価は実力からすれば割高でも、“ひょっとすれば”の日本取引所グループも面白い。
13年1月に強引に裏口上場した東京証券取引所の日本取引所グループです。完全独占企業なので潰れませんが、独占にあぐらをかいて努力も変革も怠っている会社です。
世界の証券取引所は、証券・金融だけでなく農産物、金属、それにすべてのデリバティブ取引、さらに電子化された世界的ネットワークを備えた“勝ち組”がはっきりとしています。
それが世界最大の先物・オプション取引所のCME、ニューヨーク証券取引所を買収したICEの2社で、ともに時価総額は2兆円を大きく超えています。これに、傘下に欧州最大のデリバティブ取引所があるドイツ取引所と、香港・上海・深セン取引所をまとめて世界の四大取引所となります。
ここに出てこない米NASDAQやロンドン証券取引所などは、これから先は単独での生き残りが難しいとされています。
日本取引所グループの時価総額は6500億円ですが、どう考えても大変に割高です。しかし万一、世界の四大取引所を中心とした最後の世界の取引所再編レースに加えてもらえるなら、株価は大化けするかもしれません。可能性はゼロではない。
何しろ日本は中国を除くとまだ世界第2位の資本主義国で、そこの独占取引所なのです。でもプライドだけは高いので、仮に話が持ち込まれても即座に断ってしまうでしょうね。
――株価が上がる見込みのある企業とは逆に、買ってはいけない銘柄についてもお聞きしたい。もし、三つ挙げるとしたら?
「一つ目は、ルノーに食い尽くされて数年後には残骸だけになっている日産自動車。
二つ目は、国内ではNTTとの圧倒的な体力差があり、米国では旧AT&Tの流れを引く2強との絶望的な差と絶対に認可されないTモバイル買収でにっちもさっちもいかなくなるソフトバンクでしょう。
三つ目は、日本人に提供するサービスに見合わない高額ロイヤルティーを価格に上乗せしていることが、ようやく日本人消費者に認識され、あとは何をやってもダメで坂道を転げ落ちるだけの日本マクドナルドでしょうね。魅力を感じませんね」
― [闇株新聞]速報【4】 ―
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