大阪の珍味メーカーは世界進出の足がかりとしてなぜタイを選んだのか?

高田胤臣

タイのスーパーには日本語表記の大袋で陳列されている

 佃煮などの商店から始まった家族経営の店が、1947年の開業から来年で70周年を迎える今、海外進出の足がかりとしてタイで工場の建設を勧めている。(参照:前回記事「「堺から世界へ」。タイのコンビニに大阪生まれのイカのつまみが置いてある理由」

 家族経営の小さな店からはじめ、年商50億円弱の企業に成長したマルエスがさらなる飛躍をするには海外進出は必須だった。そのための足がかりとして、なぜタイを選んだのか?

 その理由は、タイが元々イカの仕入れ先のひとつでもあったこともあるがそれだけではない。、田中社長の地道な現地調査の結果でもあった。

「海外進出の条件としてマーケットがしっかりあること、流通がチェーン化されているなどいくつかあり、どこでもいいわけではありませんでした。例えばベトナムではチェーン店でもせいぜい100店舗規模と小さい。その点、タイは市場が成熟し、原料調達もでき、親日家が多いという好条件が揃っていました」

「堺から世界へ」を掲げ、自社の躍進に日々忙しく飛び回る若き社長、田中稔朗氏。(写真提供:マルエス)

 タイもイカを食べる文化が根付いており、飲食店、屋台、コンビニエンスストアなどでスルメのような干しイカなどの製品が手に入る。また、マルエスのイカ以外の主力製品でもある海苔も、日本とは違った形や味つけではあるが、消費が多い。現在はタイ人も本格的な和食の味に慣れてきている。マルエスの製品がタイ人の間に認知され、工場稼動でタイ市場に価格がマッチすれば確実に販売数量を伸ばすことができる。

 実際、マルエスの製品を試食させてもらったが、コンビニエンスストアで販売されている袋詰めのつまみとは思えないクオリティであった。これはマルエスのこだわりでもあり、イカや海苔の品質はもちろんのこと、小麦粉や製品を揚げるための油にも妥協のない製品選びをしている。製造技術も他社には真似できない、最早職人技と言ってもいいレベルで、そんな経験に裏付けされた人間の手腕が惜しみなく投入されているのだ。

「弊社の一番の技術は温度と時間。これは食感に関わる大切な部分です。小麦粉のブレンド、イカを伸ばす技術もそうで、他社には真似できないものだと思います。ですので、最初のうちは日本から職人を派遣し、部長クラスも頻繁に出張させ管理してタイ人の職人を育てながら操業していくつもりです」

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日系企業の多いタイだからこその強み

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