都民のための地銀「きらぼし銀行」は、なぜ新銀行東京を救済したのか?

「新銀行東京」も巻き込む3行統合――「東京のための銀行」目指す

 都市銀行の存在が身近な東京都内では、銀行間の競争が他の都市圏よりも格段と激しく、地方銀行は、営業力のある「メガバンク(都市銀行)」と地域密着の「信用金庫」などとの板挟みとなっていた。  しかも、首都圏では、2016年4月に横浜銀行と東日本銀行が「コンコルディア・フィナンシャルグループ」として、2016年10月には、常陽銀行と足利銀行が「めぶきフィナンシャルグループ」として金融持株会社方式で経営統合するなど、地銀同士の統合も相次いでいる。この両グループよりも規模が小さい東京TYFGは、傘下銀行を合併させることよって、より一層のスケールメリットを生み出すとともに、東京オリンピックを控えた東京都において「東京都民のための銀行」をアピールすることで、経営基盤の強化を図るという狙いもあると考えられる。

東京の地銀連合に「新銀行東京」を巻き込んだメリット

 それでは、この「東京地銀連合」とも言える大同合併に「新銀行東京」が加わった理由は何処にあるのだろうか。  思い返せば、新銀行東京はもともと石原慎太郎元都知事の肝煎りで都内の中小企業支援のために2004年に設立されたもの。当初、杜撰な融資が多数行われたことで多額の負債を抱え、経営破綻寸前にまで追い込まれたものの、支店の削減・人員削減などのリストラと、都の追加出資により、2010年にようやく黒字化するに至ったという経緯がある。  半ば、東京都にとって「お荷物」とも言える新銀行東京であったが、その一方で、東京TYFGは、東京都が出資する新銀行東京を傘下に収めることで、都との繋がりを強化したいという思惑があると考えられる。実際、今年7月には、東京都水道局が水道工事のローンに関する初の業務連携を東京TYFGと締結するに至っており、今後もこうしたかたちで都と東京TYFG・きらぼし銀行との連携は強まっていくことが予想される。  さらに、設立の経緯から商工会議所との結びつきが強い都民銀行と、信用金庫を起源に持つ八千代銀行という、いずれも中小企業の経営支援を得意分野とする両行にとっては、もともと新銀行東京と取引があった都内の中小企業を囲い込むことで、銀行同士の競争が激しい都内において貴重な新たな法人顧客の獲得を図ることができるというメリットも大きいであろう。  また、一度破綻寸前においこまれていた新銀行東京にとってしてみても、信頼のおける地方銀行の傘下に入ることは、自らのノウハウを最大限に生かすことができるため、両者にとってwin-winの関係が築けることは想像に難くない。
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