ヤフー、三菱UFJ信託が商品化したAI運用投信の実力

近頃、AIという言葉をやたらと目にするようになった。「人工知能」を意味する英語の略称だが、企業経営の判断にも活用される日が近く、資産運用の世界でも人智をはるかに超えた手腕を発揮することが期待されているという。果たして、本当にAIによる運用は万能なのか? 徹底検証してみたい

水面下でAI金融商品の準備を進める企業は少なくない?

ヤフー本社

ヤフー本社が入居するビル。宮坂社長も「早いタイミングで(信託商品を)出したい」と意気込むなど、他社にない強みとして今後の事業の柱に位置づける方針だという

 国内における投資信託(投信)の分野にもにわかにAI化の波が押し寄せている。その結果、意外な大手企業の参入が具体化しているようだ。ポータルサイト最大手の「ヤフー」もAIが運用を手掛ける国内初の投信の販売を計画中だという。ネット上での検索履歴などのデータを解析して銘柄を選出するというのがそのスキームだ。  ’08年9月のリーマンショック以降の過去データでシミュレーションしたところ、市場平均よりもはるかに高いパフォーマンスとなったとか。もっとも、「リーマンショック以前」ならともかく、「以降」ならその約半年後に大底をつけただけに、生身の人間が銘柄を選んでいる投信の多くも高実績を達成しているのだが……。  一方、既存の金融機関も静観しているわけではない。「三菱UFJ信託銀行」はすでにAI運用投信を組成しており、まずは機関投資家から資金を募ったうえで、今年度内にも個人投資家に門戸を開く方針だ。日々、AIが200近くにも及ぶ指標と株価の関係を分析して学習し、極力損失を被らない運用を行うという。やはり過去データでシミュレーションを行ったところ、こちらはリーマンショックの前後も含めた’08~’15年度において一貫してプラスの収益を確保したとか。なお、三菱UFJ信託銀行はコンピュータが個々に最適な投資信託の組み合わせを判定する「未来シミュレーション」というサービスもすでにネットにて提供中、AIの活用に積極的だ。  他にも水面下で準備を進めている企業が少なからず存在していることは、まず間違いないと言えるだろう。金融庁の審査次第だが、いずれ近いうちにAI投信が続々と登場することになりそうだ。

「株マップ.com」の「遺伝的アルゴリズム分析」とは?

 運用をすべて委ねるのではなく、自分自身で銘柄をチョイスする場合にもAIを活用できるサービスがすでに登場している。金融工学を用いた投資分析サービスを提供している「株マップ.com」の「遺伝的アルゴリズム分析」がその1つだ。まず「遺伝的アルゴリズム」とは、生物が環境に順応しながら進化するプロセスを工学的に模倣したもので、N700系新幹線の先頭車両をデザインする際にもこの手法が用いられたとか。  文系人間にはなかなかピンときづらいが、膨大な過去データから最も儲かった売買パターンを抽出し、それに基づいて最適なテクニカル指標の組み合わせを探し出してもらえるという。同サイト曰く、「テクニカル分析の進化形」とのことだが、このツールで無料診断できる銘柄は限られており、不自由なく使いたい場合は月額2800円(税別)のプレミアム利用料を支払う必要がある。「過剰最適化」の判定となりかねない点には注意が必要だろう。 ― [人工知能まかせ投資]でこれだけ勝てる! ―
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