201年、ニューヨークでの被爆ピアノ演奏会に参加した矢川さん
矢川さんは肩書きや年齢、国籍などで人を判断してはいけないことを、この16年間で嫌というほど学んできたのだ。
「核兵器の被害を世界で唯一受けた国のピアノだからこそ、被爆ピアノは世界に強い説得力をもってアピールできる『日本の宝物』なんですよ」(矢川さん)
矢川さんが被爆ピアノと出合ったのは48歳のとき。一方、彼の著書『
海をわたる被爆ピアノ』を読み、地元の香川県で演奏会を実現させた女子中学生や、80歳目前で難病発症がわかって矢川さんにピアノを寄贈し、人生をより前向きなものに変えた、広島県在住の男性被爆者もいる。
きっかけさえつかめば、人は何歳になっても変われる――希望が見出しづらい今、その事実に励まされる人はきっといるはずだ。
<取材・文/荒川龍>