日本が目指すべき経済モデルはイタリア型?――藻谷浩介が語る「脱・競争」のススメ
2016.09.02
アベノミクスの恩恵は、都市部や大企業が中心で、地方や中小企業にはほとんどまわってきていない。特に、東日本大震災で大きな被害を受けた東北地方の経済的復興はまだこれからだ。HBOは、エコノミスト・藻谷浩介氏の講演ツアーに同行して東北復興の“現場”を歩き、地域の特性を活かした「持続可能な経済」について考えた!
「里山資本主義」とはマネー資本主義を否定するものではなく、「お金に依存しなくても社会が維持できる仕組み」、つまり地域で持続可能な循環型の経済的サブシステムをつくり、行き過ぎたマネー資本主義の欠点を補完していくという考え方です。そのためには、お金には換算できない価値を地域で循環再生させることが必要です。
これまで日本は、工業分野に人材を振り向けすぎました。これからは、第一次産業やその関連分野に人材がシフト、都会から地方への人口移転も進んでいくでしょう。
今後の日本のモデルになるのは、資源もないのに対日本貿易黒字の、フランスやイタリアです。両国とも日本人より働いていないのに、日本のほうが赤字です。彼らが輸出しているのは、ブランド衣料や宝飾品に加えて、地方の特産品であるワイン、チーズ、パスタにオリーブオイルなど。ハイテクではなく「デザイン」や「食文化」を売っているのです。日本には、フランスやイタリアに対抗しうる地域の恵みがたくさんある。それをもっと活かしていくべきです。
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=105730
そのためには“かけがえのなさ(自分らしさ)追求欲求”が大切です。「他者と比較せず、自分の存在に意義(価値)を見出す」「自分が何かの役に立つ」というオンリーワンの原理に立つこと。他者や他地域、他国と競ってナンバーワンを目指すのではなく、「脱・競争」の里山資本主義によって地域経済を活性化していく。今回紹介した人々はみな地域の資源を活かし、地域の特性に目を向けながら里山資本主義を実践しています。このことが、東北の復興にとっても大きな力になると思います。
【藻谷浩介氏】
’64年、山口県生まれ。日本総合研究所調査部主席研究員。著書に『デフレの正体』、共著書に『里山資本主義』など。NPO法人「コンパス 地域経営支援ネットワーク」の理事長も務める
取材・文・撮影/横田 一 写真/鈴木 麦 取材協力/NPO法人「コンパス 地域経営支援ネットワーク」 ※本記事は、同NPOが主催した藻谷氏講演ツアーで直撃取材した内容をもとに構成
― エコノミスト・藻谷浩介と考える「持続可能な地方経済」 ―
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