自らのミスで甲子園を逃した男がリベンジした道

写真提供/阿部慎史氏

 夏の甲子園大会が始まった。高校球児にとって目指すべき頂点で、特に高校3年生にとっては最後の夏であり、予選も含めて悲喜こもごものドラマが繰り広げられる。高校3年の最後の夏、自らの5つのミスで、甲子園の切符を寸前で逃した男がいる。

誰も触れようとしない「甲子園の切符をのがしたミス」

 その男とは、公認会計士、税理士、行政書士の阿部慎史だ。阿部は、1996年、早稲田実業2年の時、控え捕手として、夏の甲子園に出場した。しかし、それは、 二番手捕手が大会直前に怪我をしたためであり、「三番手捕手が棚ぼたでベンチ入りしたとしか言いようがない」と阿部は言う。 「実力で正捕手の座をつかみ取る。そして甲子園へ行く」と決意し、猛練習に励む。そして、ついに、正捕手の座をもぎとった。勢いはとまらない。3年生、最後の夏の甲子園大会東東京予選、阿部は打率5割を超える活躍で、いよいよ決勝に進出。決勝の相手は、岩倉高校だ。「今思えば、いよいよ夢がかなうという思いで、足が地につかず、がちがちになっていたのだと思います」と阿部は言う。  なんと阿部は、この試合2失策1捕逸2走塁死を犯し、実質的に失点5点の戦犯になってしまう。試合14対12の2点差で岩倉の勝利。野球に「もしも」はつきものとはいえ、「ミスが2つで留まっていれば、甲子園の地を再びふめたと思うと……」と阿部は、今でも言葉をつまらせる。監督も、チームメートも、いまだにそのことに触れないことも、胸のつかえだ。
次のページ
緻密さとコミュニケーションで勝負
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会