「GINZA SONY PARK PROJECT展」の会場内には、今後の「PARK PROJECT」に関するものはもちろん、現在のソニービル竣工当時の図面や新聞記事、各時代にソニービルで開催されたイベントの紹介などといった「ソニービルが歩んできた歴史」についての資料が数多く展示されており、新しいビルによって「新たな歴史を刻みたい」というソニーの強い意気込みを感じ取ることができた。
一方で、ソニーは新しい銀座ソニービルについて「都市機能を内包するような、都市的で公共性の高い施設の完成を目指す」としているが、今の時点では、具体的にどのようなビルへと生まれ変わるのかは未発表。また、銀座ソニーパークが開園するのも約2年後の2018年であり、会場内には公園化した際のイメージモデルの展示が行われているものの、具体的な利用計画、イベント計画などはまだ示されていない。銀座の一等地で世界のソニーが運営するイベント広場、さらに東京オリンピックの開催前後ということもあり、この地で世界的に注目されるようなイベントが開催される可能性も十二分にあるが、展示を見る限りでは、そういったものが開催された際のイメージが少し沸きづらかった。
また、銀座ソニービルの隣接地には2016年3月に「東急プラザ銀座」が開業したばかり。この新たな商業ビルは、開業以来幅広い世代をターゲットとして多くの客を集め、連日混雑が続いている。さらに、すぐ近くでは銀座松坂屋跡の再開発事業も進んでおり、新しいソニービルが完成した際に、こういった近隣の「集客装置」をどう活かし、ひいては銀座全体の発展に繋げていくつもりなのかといった「銀座地域全体における新しいソニービルの位置づけ」が明確に示されていないことも残念であった。
今後の「ソニーパーク」の運営を通して、新しいソニービルが「未来の銀座」においても地域になくてはならない象徴の1つとなるようなビジョンが示されることに期待したい。
ソニービルは人気の「東急プラザ銀座」に隣接。今後の連携も期待されるが……
昨今、元気がないといわれる日本の大手家電メーカー。今後、ソニーが銀座の一等地を公園化した際にどのような運営を行い、またどのようなイベントを開催し、文字通り「新しい時代の情報発信基地」とすることができるのか、また、その経験を活かしてソニーらしさと銀座らしさを併せ持った、斬新な、そして世界的に注目されるようなビルを造ることができるのかどうかは、これまで世間をあっと驚かせる製品を送り出してきた「世界のソニー」の手腕にかかっている。
また、2017年3月のビル閉館に先立ち、「ソニーストア銀座」「ソニーショールーム銀座」は8月28日に、「ソニーイメージングギャラリー銀座」は9月8日に閉店し、9月24日からは旧銀座ライオン跡に建設中の新たな商業ビル「銀座プレイス」にて営業を行う予定。
この「銀座プレイス」は、6月15日に竣工したばかりで、今秋にグランドオープン予定。銀座プレイス内には、かつてこの地にあったレストラン「銀座ライオン」や日産のショールームも復活する予定で、特徴的な外観も相まって、こちらも「銀座の新名所」として期待されている。
余談だが、ソニービルの竣工当時に銀座を走っていた都電は現在も荒川車庫で大切に保存されている。都電に乗りつつ、50年前の銀座に思いを馳せてみるのもまた一興だ。
荒川車庫で大切に保存されている都電
<取材・文・写真/都市商業研究所>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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