改憲選挙を前にして考える――憲法9条vsコスタリカ憲法

「非軍備で戦争の意思がないことを示すことが抑止力になっている」と日本の参議院憲法調査団に語ったラウラ・チンチージャ元大統領

 いよいよ憲法改正が政治的スケジュールに乗るか乗らないかという話題が世間を賑わすようになってきた。特に憲法第9条や「平和憲法」であること、もしくはそれを変えることにこだわりがある人たちの間で、コスタリカの憲法を引き合いに出して論争が繰り広げられることがある。

「コスタリカは日本と同じ平和憲法がある vs 実は徴兵制がある」といった類のものだ。

 ところが、コスタリカを長年ウォッチし、研究してきた筆者から見ると、どちらにも一定の論拠があることは理解しつつも細部が不正確で、そのために神学論争に陥っている観がある。

 上記の論争は、そもそも対立点がかみ合っていない。というのは、コスタリカの憲法は常備軍を禁止している点において「平和憲法」と言ってもよいかもしれないし、一方で兵の募集についての条項もあるから後者の言い分も一理あるように見えるからだ。つまり、同じ憲法の中に両方の要素が混在しているため、憲法の字面だけから判断すれば「どちらも正しい」と言えなくもない。では、何が問題なのか?

 まず、コスタリカが「常備軍」を禁止していることは疑いようがない(コスタリカ憲法第12条)。しかし、逆に言うと「臨時軍」は招集できる。同第12条には、再軍備に関する条件が盛り込まれているからだ。具体的には、「大陸協定(具体的には米州機構(OAS)とリオ条約(米州相互援助条約)と国家防衛のために軍事力を組織できる」と書いてある。

 ついでに言うと、日本国憲法のような「戦争放棄」規定も存在しない。それどころか、第147条には「内閣は国会に対して国家防衛事態の宣言を提案し、兵を募集し、軍隊を組織し、和平交渉する」旨が書いてある。「徴兵制がある」と言われる根拠はこの条文だ。では、現実として「憲法上、再軍備も徴兵もできるのか?」というと、実はこれも事実に反する。

 ここまで読むと、ちょっと混乱するかもしれない。しかし、同じ混乱を日本国憲法は外国人に対して起こしている。日本国憲法第9条は常設であれ臨時のものであれ軍備は持てないし、交戦権すら否定するような文言を使っている。しかし実際は長年にわたって、自衛隊という立派な軍隊を持ち、個別的自衛権(=交戦権の一部)も政府解釈上認められてきた。2014年7月1日の閣議決定では集団的自衛権すら容認し、翌15年に成立したいわゆる安保法制で法的条件整備まで整った。これらはすべて、憲法の文言の「解釈」を問題にした上で提起、議論、制定もしくは実行されてきたわけである。

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丸腰国家―軍隊を放棄したコスタリカの平和戦略―

「理想」ではなく「現実」のもとに軍隊をなくした人々。

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