「鴻夏の恋」は実るのか? 台湾メディアが見た鴻海のシャープ買収

東京芝浦のシャープ東京支社

「4年弱にわたる鴻夏の恋がついに実った」

 2016年2月25日、台湾メディアの見出しだ。鴻は鴻海精密工業、夏はシャープ(中国語表記は夏普)を意味する。シャープが鴻海の買収提案を受け入れると発表したことを、2012年の出資交渉破談から4年越しのラブコールが実ったと評価している。

 もっともこの大恋愛はそう簡単には成就しないようだ。鴻海は前日にシャープ側から提示された重要文書を精査するため、正式契約を一時延期すると発表した。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、3500億円もの偶発債務(確定的な債務ではなく、将来的に返済義務が生じる可能性を意味する)のリストが提示されたという。25日付台湾紙・自由時報は「まるで奇襲だ!」との鴻海関係者の声を紹介している。

 ただし買収を断念したわけではない。産業革新機構という婚約者からシャープを奪い取った鴻海は最後のハードルを越えることができるのだろうか。

鴻海がシャープを欲しがる理由


 鴻海精密工業は1974年、台湾・新北市で創業した。白黒テレビ用のプラスチック部品製造から事業を始め、後に中国本土での電子機器受託生産(EMS)分野に進出。1990年代には世界のパソコン市場成長の波に乗り事業を拡大。2005年には世界最大のEMS企業に成長した。さらにiPhoneブームでも最大の受託メーカーとして大きく業績を伸ばしている。

 その鴻海がなぜ年々赤字のシャープを必要としているのか。

 まず第一の狙いは液晶事業だ。5日、シャープ本社を訪問した鴻海の郭台銘(テリー・ゴー)会長はシャープの液晶を再び世界一にすると豪語した。経営難に苦しむシャープだが、世界一のスマートフォン市場となった中国では今も強いブランド力を保っている。その好例がスマートフォン業界の風雲児となったシャオミだ。同社は「ハイブランドのパーツを格安の値段で」というコストパフォーマンスを武器としているが、シャープ液晶の採用も売りの一つだった。近年、シャープは資金不足から設備投資が鈍っていたが、鴻海の支援によって十分に巻き返せると判断している。

 またアップル社が近い将来、iPhoneの液晶パネルを有機ELに置き換えることが有力視されているが、シャープの技術力でその受注を勝ち取ることも狙いと見られる。EMS企業は薄利多売が宿命だが、付加価値の高い部品のサプライヤーという地位を手に利益拡大を図っている。

 加えてスマートフォンに代わる成長分野への投資という意味もある。台湾紙・中国時報は鴻海旗下のフォックスコン社で技術顧問を務める中川威雄氏による、“シャープ買収はロボットと電気自動車という新分野での成功につながる”とのコメントを引用している。また中央通訊社は、シャープ買収は革新的製造システム「インダストリー4.0」や消費者向けのIoT(モノのインターネット)に必要な技術を取得するためのものだと評価した。これらの新分野はいずれも多岐にわたる技術を必要としているだけに、総合家電メーカーの幅広い技術力は強みになる。

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