日本会議/日本青年協議会の宗教的活動の実態――シリーズ【草の根保守の蠢動 第26回】

会場整理には日本会議系の若いスタッフも動員された改憲1万人集会

 前回は、とある学生が純粋な愛国心から知らず知らずのうちに、日本会議/日本青年協議会に近づいてしまい、彼らの学生団体である「全日本学生文化会議」に吸い込まれていく過程を紹介した。

 今回は、日本会議/日本青年協議会がどのような活動を学生たちにさせているのか?について、引き続き、早瀬善彦氏の証言をもとに、紹介していこう。

初めての天皇陛下


 月刊誌「正論」に掲載された広告をきっかけに、靖国神社集団参拝のイベントに参加した早瀬氏は、同志社大学文学部進学後、紹介されたサークルに加入する。

「最初に誘われたのが、5月ぐらい。京都に来る天皇陛下をお迎えに行こうという活動でした」

 早瀬氏の入学は2002年4月。宮内庁の記録を見ると確かにこの年の5月、天皇皇后両陛下は京都に行幸啓されておられる。

 両陛下の御車列が通る沿道には、日の丸の小旗を持った市民が集まる。あの群衆に加わるのが、早瀬氏の活動デビューだった。

「その時、言われたんです。『あの小旗の配布は僕たちがやってるんだよ』と」

 この早瀬氏の証言も、これまで集めてきた元関係者たちの証言と符合する。あの小旗を配布しているのは日本会議/日本青年協議会だ(※1)。 もちろん、彼らと関係のない人たちが配布することもあるが、それはレアケース。ほとんどの場合、全国どこでも彼らが中心に行っている(※2)。

 行幸啓の沿道に集まる市民に日の丸を配る活動を垣間見た早瀬少年は、すっかりこの団体の虜になる。

「今から思うと、その頃にはもう、学生文化会議は歴史も伝統も有るすごい団体なんだなと、思わされていたんですねぇ」

論理性のない輪読会


 この活動の直後に開かれた石清水八幡宮での合宿を皮切りに、早瀬氏はさまざまな合宿や勉強会に誘われ出す。

「京都の西院に、事務所みたいなのがあってそこで勉強会をしてるから来てくださいって、誘われたんです」

 事務所は「ボロい一軒家だった」という。輪読会で使用されたテキストは小柳陽太郎の「教室から消えた『物を見る目』、『歴史を見る目』」だった。一般の読者に小柳陽太郎の名前は馴染みの薄いものだろう。東大文学部在学中に学徒出陣を経験した小柳は、復員後、九大文学部に復学。卒業後は主に福岡の修猷館高校で国語の教鞭をとった。代表的な著作に『平成の大みうたを仰ぐ』『永遠の皇室を仰いで』などがある

「情念ばっかりなんですよ。言うことが。論理性が一切ない。口を開けば情念だと。で、連中はすぐに岡潔の話をする。確かに岡潔は情念の大切さを説いてますが、あの人はまずちゃんとした数学者としての思考があるから情念だって言えるわけで」

 もともと理系を志していた早瀬氏は、論理性のない精神論ばかりが先行するこの学習会に強い違和感を抱く。

「ほんまは、ちゃんとした本が読みたかったんですよ。トクビルとか。左翼を批判するのならちゃんとマルクスも読みたかった。だから、『なんかここ、変だな』とは思い始めていました」

 この輪読会の前後、早瀬氏は、とある幹部から「四先生の教え」なるものを聞かされた。「四先生」とは谷口雅春 三島由紀夫 小田村寅二郎 葦津珍彦の四名。彼がこの話を奇異に思ったのは、「これは、中に入った人にしか教えないんだけどね。。。」と前置きがあったことだ。「誰にも口外してはいけない」とも言われたという。これでは、違和感は増すばかりだったろう。

合宿で行われた不思議な儀式


 その違和感を抱いたまま、大学最初の夏休みを迎える。例年、全日本学生文化会議は、夏に富士山で大規模な合宿を開いている。この合宿に早瀬氏も誘われたのだ。

 招聘された講師陣は名越二荒之助や多久善郎などのメンバー。名越は『祖国と青年』で強固な論陣を張っていた日本青年協議会のイデオローグの一人だった人物(2007年没)。多久は日本青年協議会理事長の肩書きを持つトップクラスの幹部だ(連載10回)。日青協側がこの合宿に並々ならぬ力を注いでいる様子がうかがえる。

「話の内容は、『東南アジアの人々は日本に感謝している』とかそんなんばっか。で、そんな話を聞いて、その後、反省会をするんです。で、「内観」とかやらされる。二人一組になって、瞑想みたいなことして、自分自身のことを反芻して観察しろって言われる。僕の相手は多久さんでした」

「で、そのあと、不思議な儀式が始まりました。神職の方が来て、なんかえらい神職の人だという触れ込みでしたが、その人が、神道の儀式をするんです。ヒトガタ(注:神道ではカタシロともいう)を作ってね、それに息吹きかけさせられたり」

 すでに、谷口雅春を「四先生」の一人として崇拝していることを聞かされていたことに加え、こうして不思議な儀式を目撃した早瀬氏は、この頃から「ああ、これは宗教なんだな」と気付くようになる。

 次項では「どうやらこれは宗教系の集まりだ」と気づいた早瀬氏が見た「日本会議/日本青年協議会の若手メンバー」について聞いていこうと思う。

(※1) ネットメディアの通弊で、こうした文章を書くとすぐさま「宮内庁と日本会議は繋がっている」などと騒ぎ出す輩が出る。あくまでもこうした活動は日本会議周辺が自主的にいわば押しかけで実施しているものであって、宮内庁からの働きかけ等は確認されていない。未確認の情報を推測で補い誰かを指弾することは厳に慎むべきであろう
(※2)無論、日本会議と名乗るわけではない。また、配布活動にかり出された人々が日本会議を手伝っている自覚がないケースもある。

<取材・文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>


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