ZARAの本拠地スペインに進出するユニクロ。現地紙はどう報じているか?

フランスのユニクロオペラ座店も伝統的建築に出店したケース(写真はユニクロ・フランスのサイト)

 今月、スペインの数紙が、ユニクロのスペイン進出が当初予定していたバルセロナからマドリードに変更する意向であることを伝えた。その理由は、勿論、最近のカタルーニャの独立問題から派生して起きている経済不安からである。例えば12月9日付『El mundo』紙は〈今年上半期に400社以上がバルセロナから変更してマドリードを選んだ〉と報じた。つまり、これからスペインに進出する企業はユニクロ同様進出先をマドリードにし、すでにバルセロナに本社を構えている企業は本社機能をマドリードに移した……ということだ。

 スペインではユニクロのことを「日本のZARA」と呼称している。1984年に広島郊外に1店舗を構えたこの日本のアパレル企業は、2013年頃からスペイン進出の話題がアパレル業界で話題になった。それが記事で頻繁に取り上げられるようになったのが昨年からだ。例えば昨年2月の『Fashionunited』電子紙は〈バルセロナの中心街のマドリード信用金庫基金がオフィスを構えていた建物にスペイン第一号店を開店する〉と報じた。更に同紙は〈ユニクロはヨーロッパで14店舗を構え、その10店舗は英国、4店舗はフランス、そしてベルリンにも最初の店舗を開設する〉と伝え、〈日本市場以外に中国、香港、台湾など世界14の市場に約1200店舗をもっている〉とも言及した(編集部注:2015年11月30日現在、英国9店舗、フランスは9店舗、ドイツは2店舗)。

 更に、昨年3月にはスペイン代表紙『El Pais』が創業者柳井正氏のことに触れた記事を掲載した。その中で、〈柳井は日本一の富豪である〉と報じ、〈スウォッチ時計を身に付けるのと、貧しい家庭出身であることを強調するのを好んだ〉と人物評を伝えた。更に、〈ZARAのアマンシオ・オルテガと違って隠れることをしない〉と指摘し、〈日本の多くの経営者から想像される控え目なところがなく、明白にしかも反論の余地ない発言をすることで知られている〉とも言及した。そして柳井氏が〈「日本の最大の問題は保守意識が強過ぎて、しかも臆病で、ビジネスに個性がない。『勇気をもって感じることを言いなさい』と言っても誰も相手にしてくれない」〉と述べたことを伝えた。更に同氏が〈「日本がこのまま孤立を続ければ、第2のギリシャ、第3のポルトガルになる」〉と語り、〈「モットーは『成長するか死ぬか』ということだ」〉と述べたことも付記している。

 さらに同記事の中で、柳井氏が目標を〈2020年に500億ドル(6兆円)の売上を達成することだ〉としたことも述べている。

 また、その一方で同紙は、終身雇用制が習慣づいている国で〈従業員の50%が3年以上続かない。顧客に最敬礼をし、奴隷にほぼ等しい労働勤務を創業者が強いる〉という同社の特徴にも触れている。

 同紙は柳井氏の〈イノベーションへの追求は止むことがなく、飛行機ボーイング787に採用されている材料メーカーと協力してヒートテック(Heattech)とエアリズム(Airism)と呼ぶ新しい繊維素材を開発した〉ことにも触れている。また同氏が〈後継者として家族が継ぐと良い結果は生ないとして反対している〉ことも取り上げた。これはZARAが後継者を既に決めていることとは対象的だ。

 冒頭に挙げた『El Mundo』紙は、ユニクロがマドリード進出で狙っている場所は〈グランビア通りの音楽パラスの建物だ〉と指摘している。ただ、〈マドリード市の歴史遺産委員会は同建物を内改装する場合は、そこにある歴史的要素あるものはそのまま保存する形での内改装をせねばならない〉と報じている。つまり、80年続いた映画館は、そのままの姿で保存しなければならないのだ。これは結構新規出店する企業には足かせになっているようで、ZARAのライバルであるMANGOが〈そこにマクロショップとイベントや展示会も出来るようにというプランで進出する為にこの建物の購入をマドリード市役所と3年間交渉していたが、最終的に双方の条件に折り合いがつかず交渉は成立しなかった〉という経緯のある建物だ。

 果たして、この出店計画はどうなるだろうか? また、首尾よくここに出店出来たとしても、グランビア通りと言えば最近激安ショップのPrimarkが店舗を構えた通りでもある。

 激安アパレルの「ZARA」の本拠地で、まさしく激安アパレル戦争が始まろうとしているのだ。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。


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