全国の中学生を標的にした、ある計画が進められているらしいことに気付いたのは、日本会議の機関紙『日本の息吹』最新号(11月号)の特集を読んでいた時のことだ。
日本会議の機関誌『日本の息吹』より
「日本の息吹」最新号は「憲法改正特集号/今こそ、憲法改正を!」と題され、毎月掲載される連載を犠牲にし、ほとんどすべてのページが「憲法改正」に関する記事で埋め尽くされている。
毎月恒例の誌面構成を変更してまで「憲法改正」だけに絞ったのは、11月10日に開催予定の「美しい日本国憲法をつくる国民の会」主催「武道館1万人大会」を意識してのことと思われる。
少しその内容を確認してみよう
表紙を捲ると日本会議会長・田久保忠衛による「憲法改正、最後のチャンスを逃すな!」との“檄文”。毎月様々な右派知識人・文化人が登場するこのページも今月に限っては「会長自ら」という点にも注目を要するだろう。
つづく「フォトグラフ」のコーナーも「憲法改正」一色だ。
各地方議会での「憲法改正の早期実現を求める」意見書の採択状況を日本地図とグラフを使って紹介し、さらに「美しい日本の憲法をつくる国民の会」(以下、「国民の会」)及び各地の「県民の会」の設立以来の動きを改めてピックアップしている。
「日本の息吹」平成27年(2015)11月号の裏表紙も櫻井よしこ 日本会議は、櫻井よしこを「改憲運動のマドンナ」として利用しつつある
そのあとに、「戦後体制の180度転換! 急げ、憲法改正」とのタイトルで櫻井よしこが8月6日に広島で行った講演の抄録がおさめられている。
「特集」という表記こそ見当たらないものの、見開き2ページのボリュームは、この櫻井よしこの講演こそが「第1特集」だと見ていいだろう。
と、このように、異常な熱意で「憲法改正」だけに内容を絞った最新号の「日本の息吹」だが、本稿で問題にしたいのは、巻末に配された「一千万賛同者拡大に立ち上がった人々」という特集だ。
「一千万賛同者」とは「草の根保守の蠢動」連載第一回で取り上げられた、「美しい日本の憲法を作る国民の会」が運動目標とする署名活動のことだ。つまりこの特集は、基本的には「現場の運動員」の決意表明を取り上げたものと見ていい。
日本会議と改憲に向け”共闘”する「日本青年会議所(JC)」
まずはこの特集にメッセーシを寄せた人々の肩書きを確認してもらいたい。
⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=66436
肩書きを見ればわかるように、ほぼすべてが日本会議のメンバー。なお、「日本女性の会」は日本会議が夫婦別姓反対運動等のために作った団体
登場者のほとんどは「日本会議」の関係者だ。
しかし、一人だけ日本会議と直接のつながりがなさそうな人物がいる。それが、樋口陽平だ。
日本青年会議所。そういわゆる「JC」のことだ。若手の中小企業経営者(そのほとんどが、世襲で会社を継いだいわゆる「ぼんぼん」だが)などの集まりである「JC」については、各地方で、飲み会に毛が生えた程度の「ユルい」イベントから、選挙に際して公開討論会を開催するなど「かたい」イベントまで様々なイベントを開催しているので、ご存知の読者も多かろう。
そんな「経営者団体」の中に、「憲法論議推進委員会」なる組織があり、かつまたその副委員長が他ならぬ日本会議の機関紙に登場し、しかも「現場の運動員の決意表明」特集に登場しているのだから、ただごとではない。
樋口氏はJCが取り組む「憲法論議」の啓発運動について、日本の息吹のインタビューに答えている
インタビューのタイトルは「草の根で一緒に憲法を考えよう」。
なるほど、彼は、「憲法論議推進委員会」の副委員長なのだから、その組織名通り、「憲法論議」を呼びかけているだけだと、タイトルからは読みとれる。それにJCは政治団体ではない。あくまでも「中立」な「若手経営者団体」なのだから、改憲や護憲を訴えるのではなく「憲法について議論しよう」と呼びかけるのは、その「中立性」から鑑みても問題なさそうには思える。
しかし、そんな淡い期待も、インタビューの冒頭であっさりと打ち砕かれる。
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「日本青年会議所(JC)では、平成17年(2005)から憲法に関する事業を展開してまいりました。当初はJC内に自主憲法制定委員会をつくり、これを推進母体として、平成18年には独自の憲法改正草案を発表し、啓発に努めてきました。昨年から推進母体の名称が『憲法論議推進委員会』へ変わりました。」
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と、副委員長は言う。つまり、この「憲法論議推進委員会」、もともとは「自主憲法制定委員会」という名前だったというのだ。「名称」が変わっただけなのだから「憲法論議」そのものが意図ではなく「自主憲法制定」こそが目標なのは自明だろう。もはや、「何をか言わんや」である。
後編
「日本青年会議所が改憲に向けて行う、学校への『出前授業』」では、JCが「政治的中立」を装いながら行う「出前授業」の実態についてさらに掘り下げてみたい。
<取材・文/赤菱耕平>