安倍政権を取り巻く「改憲勢力」の淵源――シリーズ【草の根保守の蠢動 第21回】

 前回は、ここ最近の「日本会議」に関する報道等で散見される、稚拙な議論について、批判的検討を加えた。指摘した内容は、大きく分けて、2つ。「いかなる宗教者と雖も一般市民と同じ権利を有している以上、宗教団体の名前を羅列することだけでは、検証にも批判にもなっていない」というのが1点目。2点目は、「神道政治連盟が目立つからとて、神道政治連盟がまるで首魁であるかのように語るのは浅薄である」というものであった。

 この2点を踏まえて議論を前に進めよう。

 既存メディアによる「日本会議」報道は視野が狭い。

 そもそものところ、前回、批判的検討の対象とした「週刊朝日」10月23日号の記事にしても、また、その他の日本会議関連の報道にしても、「安倍政権と日本会議の関係」のみに注目しているという点に限界を感じる。

 つまり、今のメディアに見えている光景をあえて図式化するとこのようなものだろう。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=66238

 極めて単純な図式だ。

 しかし果たして、事態はこれほど単純なものだろうか?

本連載が辿り着いた「改憲勢力」の淵源


 日本会議から伸びるラインについては、今年2月の段階の本連載第一回目ですでに指摘している。これに加えて、本連載では、「日本会議」そのものが、椛島有三率いる「日本青年協議会」によって運営されていること(連載5回)をお伝えした。

 さらに、連載13回からは、「安倍晋三の筆頭ブレーン」と呼ばれる伊藤哲夫と、彼が率いる「日本政策研究センター」についてお伝えした。

 そして、「日本会議」の事務局を司る「日本青年協議会」も、「日本政策研究センター」の代表である伊藤哲夫も、みな、70年安保のころに生まれた、「生長の家学生運動」の出身者であることをエビデンスを添えて立証した。

 ここまで本連載が明らかにしてきた人脈を、図式化するとこのようになる。

⇒【資料】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=66239

 つまり、来夏の参院選の後を見越し、改憲を求める1000万人規模の署名活動を展開している「日本会議」も、支持者向けの講演会とはいえ「本音は明治憲法復元だ」と主張する「日本政策研究センター」も、元をただせば、「生長の家学生運動」に行き着くわけだ。まさにここが安倍政権を取り巻く「改憲勢力」の淵源と言っていいだろう。

 ここで、前回示した、本連載の問題意識について思い出していただきたい。

「安倍政権の反動ぶりも、路上で巻き起こるヘイトの嵐も、『社会全体の右傾化』によってもたらされたものではなく、実は、ごくごく一握りの一部の人々が長年にわたって続けてきた『市民運動』の結実なのではないか?」

「反動の色をますます強める安倍政権を支えるものも、路上で巻き起こるヘイトの嵐を支えるものも、実は、同じ人々がオーガナイズしているのではないか?」

という仮説を立証することが、本連載の目的であると書いた。

 つまり椛島有三率いる「日本青年協議会」及び「日本会議」のラインと、伊藤哲夫率いる「日本政策研究センター」のライン以外に、もう一つ、「行動する保守」界隈に代表される顕在化した右傾化市民運動や、その他の様々な右傾化言説を支えるラインがあるのではないか?というのが、本連載の仮説だ。

 ではこの「第3のライン」は、果たして存在するのだろうか?

安倍政権を支える「生長の家政治運動・第3のライン」


 ここで一枚の写真をご覧いただきたい。

出典/YouTube「ダイジェスト 第6回東京靖国一日見真会」より(https://youtu.be/LAY2jsefbZA)

(動画リンク⇒http://youtu.be/LAY2jsefbZA

 今や「安倍後継の最有力候補」との異名を持つまでになった、稲田朋美政調会長だ。

 この写真で稲田朋美が掲げている書籍は、生長の家の経典、「生命の實相」。しかも今現在新刊書として流通している版の物ではなく、戦前に出版されたバージョンのものだ。稲田朋美はこの講演の中で、「(この戦前版の「生命の實相」を)祖母から受け継いだ」「ボロボロになるまで読んだ」と語っている。

 稲田朋美が「生命の實相」を掲げて講演したことや、祖母から受け継いだものをボロボロになるまで読み込んだということを根拠に、「稲田朋美も生長の家だ!」と言いたいのではない。それに、そんなことをしても、「第3のライン」を立証することにつながらない。

 さらにもう一つ、写真を見ていただこう。

⇒【写真】はコチラ http://hbol.jp/?attachment_id=66241

出典/YouTube「平成26年同期の桜を歌う会2 塚本幼稚園2 教育勅語・日の丸行進曲・日本・西村眞悟先生挨拶ほか from YouTube」(https://youtu.be/-QeImMIi2hE)

(動画リンク⇒http://youtu.be/-QeImMIi2hE

 今度の写真は政治家ではない。整列した幼稚園児たちだ。この写真は、大阪護国神社で開催された「同期の桜を歌う会」に「塚本幼稚園」の幼稚園児たちが参加した様子をとらえた動画をキャプチャしたもの。

 この塚本幼稚園、一部のメディアでも取り上げられたこともあるように、「愛国教育」で有名だ。少々見にくいが、動画に添えられたキャプションをご覧いただきたい。「教育勅語」とある。この写真は、幼稚園児たちが「教育勅語」を唱和するシーンのキャプチャしたもの。この後、「教育勅語」に続き、戦時歌謡の「日の丸行進曲」や「愛国行進曲」などを唱和していく。

 これも、「幼稚園児に愛国行進曲を歌わせるなんて!」と眉をひそめたいためにご紹介したのではない。

 あくまでも目的は、「第3のライン」の存在を立証することにある。

 この二つの写真、一見何ら関係のないように見える。しかし、「生命の実相を掲げて講演する稲田朋美」と「愛国行進曲を唱和する塚本幼稚園」の間には、極めて太い関係性があるのだ。

 例によって「生長の家政治運動」出身者たちが次から次へと出し続けてきた過去40年分の膨大な資料を漁り、その関係性についての確証をつかむことに成功した。

 次回、いよいよその「確証」を元に、日本会議や日本政策研究センターとは別の「生長の家政治運動第3のライン」の存在を指摘する。ご期待いただきたい。

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>


日本会議の研究

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