日本人だけが知らない「サッシで省エネ」の秘密
毎日蒸し暑い日々が続く日本列島。こんなときに考えてみたいのは住まいの省エネ化だ。きちんとエネルギー効率を考えた家をつくれば、エアコンに頼らなくても夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる。光熱費削減はもちろん、健康で快適な生活にもつながる。
住まいを省エネ化する際、まず注目すべき点は、ズバリ「窓」だ。壁や床、天井の気密や断熱、そして日射をさえぎったりといったことを考えるのも大事だが、家のエネルギーの60%以上が、開口部である窓を通じて出入りしている事を考えると、間違いなく最初に考えるべき重要なポイントとなる。
窓は、窓枠(サッシ)とガラス面が組み合わさっているが、今回はサッシ部分を考えてみよう。日本人にはおなじみのアルミサッシ。驚いたことに、このアルミサッシが主に使われている国は、先進国では日本だけなのだ。各国別のサッシの素材を見てみると一目瞭然で、住宅の省エネ化が進むドイツや北欧はもちろん、アメリカや中国、韓国までもが樹脂製、あるいは木製サッシが主流になっている。
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アルミは軽くて耐久性があり、価格が安いという点では確かに便利だ。しかし、熱の伝えやすさは樹脂や木製の1000倍以上なので、暑さや寒さの対策としては最悪な素材となる。これまではメーカーの都合でアルミサッシが重視されてきたが、これからは消費者が自分の暮らしを快適にするためにサッシを選んでいく時代になってくるかもしれない。
スウェーデンの省エネ住宅の部材販売を行っている吉田登志幸氏は、このように言う。
「私が販売している木製トリプルサッシの性能は、一般的なアルミシングルサッシの3倍以上あります。値段は2倍以上するのですが、長い目で見たら光熱費という点でも元は取れます。結露なんてまったくしませんし、何より温度変化が少なく快適だというのがいいですね」
吉田氏は、自宅をスウェーデン式の省エネ住宅として2006年に建築。この住宅に引っ越してから、子どもたちも明らかに風邪を引きにくくなり、エアコンも1年を通して1週間ほどしか使用していないという。吉田氏によると、新築を買うならサッシごと交換した方が良いが、リフォームなら金額の安い内窓がお勧めだとのこと。予算や状況に合わせて、効果のある方法を選べるのも嬉しい所だ。
日本の大手メーカーでも、最近は省エネを重視した樹脂サッシが出始めてきているが、全体的にはまだまだの状態だ。サッシの話は一例だが、日本人だけが知らない住宅とエネルギーの秘密がわかれば、日本の省エネ化がもっと進むかもしれない。
<取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
アルミサッシを主に使っているのは、先進国では日本だけ
値段は高くても、光熱費で元が取れる
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
『ご当地電力はじめました!』 地域の電力は自分たちでつくる!各地でさまざまな工夫をこらして、市民主導の「ご当地電力」が力強く動き出しています。 |
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