日本企業をも巻き込んだ「ブラジル国営石油会社ペトロブラス汚職事件」。ブラジル経済に大きな翳り

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 中南米で最大の経済大国ブラジル(GDP世界7位)が現在、政治的そして経済的に深刻な危機にある。

 経済危機が引き金となって政治危機にまで広がったのであるが、その中でも国営石油公社ペトロブラス(Petrobras)に絡む汚職問題は全土を襲う大地震であるかのように、ルセフ大統領の政権維持を非常に難しいものにしている。

 この汚職問題と経済の後退によって深刻な財政難にある政府は緊縮策を強行している。その影響で、ペトロブラス社の懸案になっているブラジル沖合いの海底油田の採油に必要な掘削船の建造が融資が止まったことで、それに資本参加している日本の企業への支払も滞って損失が出ているのである。

汚職事件の余波で日本企業も投資回収困難に


 ペトロブラス社が出資している世界最大級の掘削リグ企業セテブラジル(Sete Brazil)は、ペトロブラス社から28隻の掘削船の建造を受注し、それをアトランチコスル造船所(EAS)やリオグランジ造船(ERG)など造船会社5社に建造を依託していた。そして川崎重工や三菱重工、IHIなどの日本企業は日本の技術をもってEASやERGに資本参加した。

 しかし、ペトロブラスの汚職の影響で、ペトロブラスは投資を削減した為に前出し造船会社5社への融資も止まってしまい5社は資金難になってしまったのだ。その結果、これらの企業に出資した日本企業もその影響をモロに受けてしまったのである。セテブラジルでは他にも49隻の石油タンカーをペトロブラス社から受注しているが、現在まで9隻が引き渡されただけだ。16隻は建造中だとされているが、残りの建造については不明だという。

 7月28日付スペイン紙『El Pais』はルセフ大統領がペトロブラスの汚職事件による損失規模は<「180億ドル(2兆2,500億円)、それは2014年のGDPの1%に相当する」>と述べたことを伝えた。更に同紙は<GDPにおいて1.7%の後退を導く恐れがある>ことも指摘した。

 この記事に先立って、アルゼンチン経済紙『iProfesional』は、今年4月の記事で<この汚職事件によるインパクトは270億ドル(3兆3,750億円)>と推定している。更に、<87億ドル(1兆870億円)の投資減に繋がる>とも指摘し、<最も影響を受けるのは建設業界で192,000人の雇用が失われることが懸念され、同業界の5%の後退が予測される>と報じている。そして<建設業界ではこれまで1%から3%の水増し見積もりが行なわれ、それが受注したあとに政治家や官僚に渡されていた>と汚職のカラクリを伝えていた。

堰を切ったように悪化するブラジル経済


 ペトロブラスの汚職疑惑と同社の投資の大幅な削減は経済低迷に喘ぐブラジル経済の見通しをより暗いものにしている。それに加えて<ブラジル中央銀行は、2015年のブラジル経済はGDPマイナス1.76%と予測した。これは1990年以降最悪の結果となる。インフレは9.23%と見込まれており、これも2003年以降一番高い数値である>しかも、<政府は今年予定していた1.1%の財政黒字の達成は出来ないと発表し、0.15%で収めることに下方修正した。しかし、それには26億6,200万ドル(3,327億円)の歳出削減が必要だ>と伝えたことが影響して、経済専門家の間でさらに悲観論が強まったという。今年の経済の予測数値は1990年以降最悪の結果となることは確かである。(参照:「infolatam」)。

 これらの経済ショックは、政界にも影響し、ブラジルは政治的にも不安定な様相を呈している。国内景気は低迷し、財政改革も必要であり、財政緊縮策の継続的な実施が必要となっている。そんな厳しい状況の中で、支持率が大きく下がっているルセフ大統領が連立政権を維持しながら今後も財政緊縮策を続けて行けるのか、非常に難しい舵取りが要求されている。

 来年はブラジルでオリンピックが開催されるが、それが景気の回復に繋がることは全く期待出来ない。また野党の一部ではペトロブラスの汚職問題の今後の展開によってはインピーチメント(大統領罷免)も考えているという。

<取材・文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなしていた。


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