「大阪都構想」で考える、住民投票で「よくわからない」人が取るべき行動とは?

橋下徹市長

橋下徹市長(大阪市記者会見より)

 大阪市を解体し5つの特別区を設置することの是非を問う住民投票が、いよいよ5月17日に差し迫った。

 今後の記述で公正を期すためにも、まえもって著者の立場を言明しておく。著者は、明確に「都構想」なるものに反対だ。

 著者はいま「日本会議」に関する連載を書くため、各地の自治体を取材中だ。その取材がてら、港・千代田・足立の区役所職員に特別区制度について聞いてみたが、みな一様に「単独ででも、周りの区と合併してでも、市に移行しないと権限も財源もなく、なにもできない」という。

 反対に「このまま特別区でいたい」などという話は、一切、聞くことはできなかった。財源も権限もない特別区など1日も早く返上したいというのが東京特別区の行政の現場に従事する人達の本音だろう。先日、「『大阪都構想・住民投票』を世田谷から見つめる」と題する論考をハフィントンポストに掲載した世田谷区の保坂区長も、この論考の中で「特別区の財源と権限のなさ」を指摘している。区長をはじめ現場の行政マンまで口をそろえて「不自由だ」という制度をなぜ大阪の人々が求めるのか、理解に苦しむというのが、著者の基本的なスタンスだ。

※THE HUFFINGTON POST 「『大阪都構想・住民投票』を世田谷から見つめると」 http://www.huffingtonpost.jp/nobuto-hosaka/osaka-setagaya_b_7210704.html

 ともあれ。本稿の目的は、「反対すべき理由」を書き連ねるのが目的ではない。都構想反対意見には、先述の世田谷区長・保坂氏の論考や、京都大学大学院の藤井聡教授による「大阪都構想が日本を破壊する」(文春新書)というすぐれた論考があるので、こちらにあたっていただきたい。

 本稿では、「反対か賛成かわかりかねる」「そもそも興味がない」という人はどう投票すべきなのかを考察したい。

住民投票は投票するのが難しい


 一般的に住民投票は、「賛成か反対か」の二つの選択肢しかない。そのため、「どちらとも言えない」「よくわからない」という有権者は、投票し難いものとなる。

 その良い事例が、今年2月に投開票が行われた埼玉県所沢市の「小中学校へのエアコン配備の是非を問う」住民投票だろう。

 この住民投票の投票率は31.54%という低水準に止まった。小中学校と無関係な市民にとっては興味を抱きにくい争点で、特に「どちらとも言えない」という有権者にとっては全く投票先がない問題設定であったことが、低投票率の原因の一つだろう。

 今回の大阪での住民投票は、大阪市全体の枠組みを問うもので、所沢市の事例ほどの低投票率になることはないと見込まれる。

 それでも、「賛成か反対か」のみが問われる形式では、「どちらともいえない」「よくわからない」「興味がない」市民にとっては、投票しにくいものだ。

「よくわからない」「興味がない」は悪いことではない


 大阪で繰り広げられる論戦を東京から観察していると、賛成派反対派双方ともに、賛成か反対か態度を決めるよう有権者に迫っているように見える。そんな状況下で、「よくわからない」「ゆっくり考えたい」という立場を保持することはとても難しいことなのかも知れない。

 大阪に住む筆者の友人は先日、「反対派からも賛成派からも電話かかってきて、どないすんねんどないすんねんと聞いてきよる。態度なんか決められへんのに。しんどいわ。」と正直な気持ちを吐露してくれた。こういう気持ちを抱いている大阪の有権者も少なからずいるだろう。

 だが、罪悪感を抱く必要はない。むしろ「どうしていいかわからない」というのがもっとも正しい態度なのかもしれないのだ。

 確かに大阪市は、關淳一市長時代に発覚したカラ残業をはじめとする職員厚遇問題や飛鳥会事件等に代表される関連諸団体との癒着などの問題を抱えている。これらの問題は当然のことながら解決していかねばならない。また、大阪府と大阪市の役割分担が曖昧な分野は確かに存在しており、二重行政とまではいかないまでも明確な線引きが必要とされているのも事実だろう。

 しかし、良識ある大人であれば、「いまあるものを一気に変えてしまう」ことが、なにかしらの新しい問題を生むことを容易に想像できる。「問題は問題としてみとめるが、一気に解決なんかできるわけがない。だからゆっくり一つずつ良くしていこう」という態度は、極めて良識的な態度と言えるだろう。

 こういう観点に立つと、「よくわからない」「どうしていいかわからない」という言葉で態度は、むしろ、こういう良識的な態度の表れだということがわかる。

 だから、胸をはって「よくわからない」「どうしていいかわからない」と表明すべきなのではないだろうか。

良識を示すための「反対」という投票行動


 ゆっくり漸進的に問題を解決していこうという態度であれば、行政の枠組みを変えるというドラスティックな解決策に与みすることはできないはずだ。ならば、都構想のメリットデメリットの詳細を検討するのではなく、はっきりと、「もうちょっとゆっくりとやろうよ」と声を上げる必要がある。

「『どちらともいえない』『よくわからない』」から「棄権する」では、だめなのだ。賛成と反対の2つの選択肢しかない住民投票で棄権をすることは、「態度保留の意思表示」ではなく、単に「住民投票に勝った側に加担する」という意思表示でしかない。都構想推進側が住民投票に勝った場合、賛成側に加担したことになり、都構想反対側が勝った場合、反対側に加担することになるだけのことなのである。

「棄権は中立のように見えて、中立ではない」

 どの選挙でもよく言われることだが、二者択一の住民投票ではなおさらこれを肝に銘じる必要がある。

 で、あるならば、「よくわからない」「どちらともいえない」「ゆっくり考えたい」という人も、その立場を今後も維持しつづけるための戦略を自分で取る必要があるのではないか。

 そのためには、当面のあいだは大阪市がそのままの形で残っている必要がある。大阪市が残っていればこそ「もうちょっとゆっくり考えよう」という態度は存在可能なのだから。

 と、なると、「よくわからない」「どちらともいえない」という人の投票行動はただ一つ。

 5月17日、投票所にいって、「反対」と投票するのが最善の選択肢ということになるはずだ。

<文/菅野完(Twitter ID:@noiehoie)>
1974年生まれ。アメリカ・テキサス州の大学を卒業後(専攻:政治学)、某一部上場企業に勤務。サラリーマンの傍、「保守かつ右翼」という立場から反原発運動・反レイシズム運動に従事。共著「踊ってはいけない国で踊り続けるために」(河出書房新社)など。単著「保守の本分」(扶桑社新書)


大阪都構想が日本を破壊する

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