原発延命のための優遇策? 今話題の「CFD」とは
昨年閣議決定されたエネルギー基本計画で、「重要なベースロード電源」と位置付けられた原発。しかし同計画へのパブリックコメント(国民からの意見募集)では、寄せられた意見の9割超が脱原発を望むものだった。安倍内閣はこうした国民の意向を無視するかのように、原発再稼働に前向きだ。
秋から冬にかけて、多くのビジネス・論壇誌でにわかに注目されている言葉がある。「CFD(Contract for difference)」=差額決済契約。電力の買い取り価格を一定期間、保障することを可能とするしくみだ。日本でも2012年から始まった、自然エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)と似ている。
違いは、FITが自然エネルギーを対象としているのに対して、CFDは原発で生じる全てのコストを電気料金に転嫁できる「原発優遇策」として導入が検討されていることだ。コストには、いわゆる「核のゴミ」の処分費用や廃炉費用などが含まれる。
CFDは英国で導入が決まり、原発1基で適用されることが決まっているという。その価格は1キロワットあたり15.7円。火力や陸上風力よりも高く、太陽光と同等(『東洋経済』2013年10月2日)。しかも買い取り期間は35年である。日本のFITが20年であることを考えれば、破格の好待遇といえよう。
これが日本でも導入されれば、電力会社は原発のコストを自らの経営努力なしに、電気料金に上乗せできるようになる。国民に安易に「ツケ回し」できるということだ。現在、経産省の専門家会議で同制度が検討されているが、会議は同時中継されていない。
会議の委員長は「この場で意見を言いにくいという方がいらっしゃる」と述べた(大島堅一「さらなる原子力保護政策は許されるか」『世界』2013年12月号)そうだが、国民の目を避けるようにして検討が進んでいるのだ。
しかし、そもそも原発は他の電源と比較して発電コストの安さが売りだったはずである。3・11より前、政府や電事連は「1キロワットあたり5.3円」と試算していた。東電原発事故後、同8.9円に「上方修正」(2011年、コスト等検証委員会試算)されたが、それでも英国のCFDによる買い取り保証単価15.7円と比べると、約半分に過ぎない。
実際のところ、日本の原発の発電単価はいくらなのか。3・11を経た今でも、過小に見積もられている可能性がある。しかも東電原発事故の賠償・廃炉費用が1兆円増えるごとに、単価は0.1円アップするとされる。
ともあれ、ここにきてCFDが政府の検討課題に上るのは、もはや「原発は安価」という建て前を、経産省や電力業界自身が保てなくなってきているからだろう。それならば、国民に原発のコストを包み隠さず開示し、これからも原発を続けるのか否かをめぐり、国民が判断を下せる環境を整えるべきだ。 <取材・文/斉藤円華>
「核のゴミ」の処分費用や廃炉費用も電気代に転嫁?
原発は他の電源より安かったはずでは……
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