またしても「円安倒産増加」の報。全体では「倒産数減少」というがその裏側は…

円安倒産増加 先日、帝国データバンク調査による円安関連倒産の調査報告を報じたが、12月8日、東京商工リサーチも円安関連倒産の調査を発表。円安関連倒産の増加をさらに裏付ける結果となった。  東京商工リサーチ調査によれば、2014年11月の「円安」関連倒産は21件(前年同月比16.6%増、前年同月19件)となり、2014年1-11月では259件と前年同期より倍増という結果になった。 ※<グラフ>はコチラ⇒https://hbol.jp/?attachment_id=15702 円安倒産関連月次推移 さらに円安は進行し、12月5日には一気に121円台へと進み、週明け8日現在、121~121円代中盤と依然として安い水準を維持している。  東京商工リサーチの報告によれば、急速な円安は、輸出企業には収益を押し上げるが、海外からの輸入に頼るエネルギー、資源、食料品など幅広い分野では物価を押し上げ中小企業の体力を消耗させ、一般家庭の支出行動にも影響が出始めているとしている。  原油価格の急落も帳消しにするほど急激な円安であるため、今後の円相場の推移次第では、年明け以降は倒産の増勢も現実味を帯びてくるとしている。  一方、全体としての倒産件数は減少傾向にある。東京商工リサーチ調査によれば、倒産件数は、前年同月比14.6%減(126件減)で2カ月連続で前年同月を下回った。この傾向は2008年くらい、すなわち安倍政権より前から始まっており、同じ東京商工リサーチによる倒産件数の年次推移を見ると、2008年から右肩下がりで減少が続いているのである。 ※<グラフ>はコチラ⇒https://hbol.jp/?attachment_id=15703
円安倒産増加

東京商工リサーチ調べ

 しかし、実はこの倒産件数の減少だけをもって景気動向の指標にはなりづらいという。  実は2014年2月10日に東京商工リサーチが発表した調査によれば、企業の「休廃業・解散(「休廃業」は資産超過状態での事業継続断念、「解散」も資産に余力がある状態で事業継続を断念することもあるため、倒産には集計されない)」は、08年以降右肩上がりに増えているのである。 ※<グラフ>はコチラ⇒https://hbol.jp/?attachment_id=15704 休廃業・解散、倒産件数年次推移 これはどういうことかというと、倒産減少については時期的に見ても中小企業円滑化法が要因と見るのが一般的であり、業績ジリ貧や後継者不足、業界的な将来性の展望の喪失から事業継続を断念する企業は決して減ってはいないということなのである。  大手メディアによれば衆院選は現党有利との予想が大半だ。もし現与党がさらに議席を増やすのであれば、「運が悪いか能力がない」と切り捨てることはせずに、アベノミクスの真価でこうした「隠れ倒産」や「円安倒産」についても明確な打開策を打ち出してもらいたいものだ。 【参照元】 ・東京商工リサーチ 
http://www.tsr-net.co.jp/ ・「円安」関連倒産 11月は21件 
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20141208_04.html ・2013年の全国企業倒産状況 
http://www.tsr-net.co.jp/news/status/yearly/2013_2nd.html ・2013年「休廃業・解散企業動向」調査 
http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20140210_03.html <取材・文/HBO取材班>
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会