東京駅の顔、八重洲ブックセンターの意外なオーナー

東京駅八重洲口 写真/Ryohei Noda

ビジネス書の蔵書数、売上ランキングの信頼度は日本一

 八重洲ブックセンターは首都圏を中心に13店舗を展開する書店チェーンです。日本有数のビジネス街・八重洲にある旗艦店の本店は、150万冊もの膨大な在庫量を誇る8階建ての大型書店で、特に土地柄、ビジネス書の蔵書数や売上ランキングの信頼度は日本一とも言われています。なお余談ですが、八重洲という地名は、徳川家康の外交顧問ヤン・ヨーステン(和名:耶楊子(やようす))に由来しています。  創業は1978年、スーパーゼネコン鹿島建設の「中興の祖」であり、政治家としても活躍した鹿島守之助の発案で、鹿島の旧本社ビル跡地に開業したのがその始まりです。鹿島の経営を立て直すために掲げた、事業成功秘訣二十箇条の第6条にも「本を読む時間を持て」とあるように、無類の読書家として知られた守之助が夢に見た「どんな本でもすぐ手に入るような書店」「我が国で出版された全ての本を常備する世界一の書店」こそが八重洲ブックセンターでした。

東京駅周辺の人の流れを一変させた日本最大の書店

 自社ビルの優位性を最大限に活かして、当時流通する20万点の本を買取仕入で常備することを目指した、八重洲ブックセンター。その当時、日本最大の書店といえば、1964年に竣工した紀伊國屋書店新宿本店で、書店サイズが20坪~30坪の時代に600坪もの規模を誇っていたわけですが、八重洲ブックセンターはなんと1300坪、日本書店組合連合会の反対で、縮小してのスタートでしたが、それでも他を圧倒するものでした。  誰も見たことのない理想の本屋を目指してオープンした八重洲ブックセンターは大きな話題を集め、開店4日目までの来店者数で12万人、1年間では1000万人、500万冊もの本が販売され、夜間人口の少ないビジネス街だった東京駅八重洲の人の流れを一変させたと言われています。なお、残念なことにその理想の書店を夢見た守之助は開業を見ることなく、1975年に亡くなっています。
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トーハンの経営参加、八重洲の再開発に光明を見出せるか?
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