明石家さんまが説く、含蓄ありすぎる「失敗」学

【石原壮一郎の名言に訊け】~明石家さんま Q:仕事で失敗ばかりして、会社でも家でも日々落ち込んでいます。書類の数字を間違えるのはしょっちゅうだし、打ち合わせに行くときに大事な資料を忘れていったり、上司との世間話で余計なことを言ってムッとされたり……。先輩や同僚は「落ち込まなくても大丈夫だよ」と慰めてくれますが、失敗してニコニコしているわけにもいきません。失敗したくないと思えば思うほど、激しく緊張してまた失敗してしまいます。この負のスパイラルを抜け出すには、どうすればいいんでしょうか?(埼玉県・25歳・広告)
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A:当たり前ですけど、世の中に失敗しない人はいません。仕事にも人生にも失敗はつきものです。もしあなたが「絶対に失敗しない人間になりたい」と思っているなら、それは図々しい望みだと言えるでしょう。しかも、失敗しないことを目標にするような了見では、周囲から「つまらないヤツ」と思われるのは確実だし、自分だって楽しくありません。  あなたが抜け出すべき「負のスパイラル」は、次々に失敗してしまうスパイラルではなく、いちいち落ち込んでしまうスパイラルではないでしょうか。そりゃまあ、失敗も少ないにこしたことはありませんが、減らすことを目指しても逆効果なのはすでに身に染みているかと思います。いちいち落ち込まなくなったら、きっと失敗自体も減るでしょう。  名言ハンターとして活躍している大山くまおさんの新刊『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』(ワニブックス)は、従来の名言集によくある前向きできれいな言葉だけを集めていないのがミソ。本の中で、明石家さんまさんはこう言っています。 「俺は、絶対落ち込まないのよ。落ち込む人っていうのは、自分のこと過大評価しすぎやねん。過大評価しているから、うまくいかなくて落ち込むのよ。人間なんて、今日できたこと、やったことがすべてやねん」  落ち込むのは、心の中に「本当は自分はもっとできるはず」という気持ちがあるから。しかし、それは幻想の自分です。失敗ばかりしてしまう自分こそが、本当の自分なんだと自覚しましょう。都合のいい自分をイメージしている限り、成長するために何が必要なのかを直視し、本当の意味で謙虚に反省することはできません。  もうひとつ、あなたは大きな勘違いをしています。先輩や同僚が「落ち込まなくても大丈夫だよ」と言ってくれるのは、慰めたいわけではなく、職場でそんな態度を取られるのがうっとおしいから。目の前で落ち込まれたら、やさしい言葉のひとつもかけないわけにいかないし、見ているほうだってテンションが下がります。態度で姑息な言い訳をしていないで、失敗したときほどニコニコしているのが、大人の気合いでありマナーに他なりません。  本には、さんまさんが失敗について語ったこんな言葉も紹介されています。「失敗を失敗だと思わないような人間になれってことやな。失敗を楽しめる人生を暮らすことが一番良い」。この境地にたどり着けたら、もう怖いものはありません。生きている限り失敗と縁が切れないなら、開き直って失敗を楽しんでしまいましょう。とはいっても、なかなか簡単には楽しめないかもしれません。でも、大丈夫。「失敗を楽しむことに失敗したことを楽しむ」というセーフティネットもあるので、気楽に挑めそうです。 【今回の大人メソッド】

落ち込むことと反省することは似て非なるもの

 たとえば仕事で失敗したときに、周囲にわかるように「ああ、俺ってダメだなあ」と落ち込むのは、押しつけがましい「反省してますアピール」でしかありません。ひとりで落ち込むのも、要は「本当はこんなはずじゃないのに」と自分で自分を慰める行為です。いずれも反省とは似て非なるもの。大人としては、そこを混同しないように気を付けましょう。 【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。 いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『日本人の人生相談』(ワニブックス)
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