コロナ禍で活躍する「キューバ医療団」。そのブラックな労働環境と犠牲になるキューバ国内の医療事情

キューバ医療団イメージ

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キューバの外貨獲得手段、「医療団派遣」

 キューバの年間輸出総額のおよそ半分を稼いでいるのが1960年代に誕生した医療団の外国への派遣である。  特にそれに拍車がかかったのはベネズエラとブラジルへの派遣であった。フィデル・カストロとウーゴ・チャベスの間でキューバから医療団を派遣する代わりにベネズエラから原油を送るといった協定が医療団の派遣が注目されるようになった始まりであった。  ブラジルでも労働者党のジルマ・ルセフが大統領だった時点からブラジルの医師が行きたがらない特に過疎地にキューバの医師を派遣していた。その後、ボルソナロが大統領に就任すると、彼らに支払う報酬の75%をキューバ政府が搾取しているとして医療団をキューバに送り返し、それでもブラジルで医療活動を続けたい医師は残留することを容認した。  またアフリカや中東への派遣も盛んで、それは60カ国以上に及んでいる。コロナ禍でヨーロッパでは昨年イタリアにも派遣した実績がある。また、ラテンアメリカの一部の国でも依然彼らが医療活動を続けている。最近では90年振りに誕生した左派政権のメキシコもこの派遣を検討しているという。

ブラック過ぎる「キューバ医療団」の労働環境

 2月に入って、外国に派遣される医療団の実像とキューバの医療の国内事情を告白している記事を3紙で目にしたのでその内容の一部を以下に紹介したい。 「一日に150人の往診をせねばならないと言われていた。かなりの距離を歩かねばならならなくなるので不可能だった。2-3軒を往診に行っただけで、その後は名前と診断書を捏造した。それに必要な患者の名前はキューバの私の友人の名前などを拝借した。このミッションの責任者はそれに気づくことはないし、その確認もしない。というのは、彼らにとって重要なのは(どれだけ多く往診したかという)人数だけだからだ」と語ったのはベネズエラに派遣されていたキューバ人医師のひとりだ。彼が匿名希望でNGO組織「Cuban Prisoners Defenders」にそれを語ったのが米マイアミの『Diario de Cuba』(2月18日付)に掲載されたというわけである。  更に同紙は彼が次にように語ったのも掲載している。 「15-16人の手術をする必要があったが、手術したのは4-5人。質問に来ただけの患者がいたが、それも手術をした患者としてリスクに加えた。予定通り手術を済ましたということにして、手術した患者に必要な薬を捨てた。責任者は嘘をついてはいけないと指摘するが、そのように手術をしたかのように偽るのが常だった」 「手術室の天井は落ちそうで、戦時下のようだった。手術した患者数を増やすのに抗生物質を恰も使ったかのようにするために捨てていた。或いは逆に抗生物資が不足していた時は患者に有効期限の切れたものを持たせたこともあった」 「時に私立病院に行って我々が日常使用するものを手に入れるために交換するものを持参して行ったこともあった」 「手元にあった小麦粉と交換で車かトラックで往診先まで連れて行ってもらう」
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派遣先によって環境は違うものの「奴隷」的労働なのは変わらず
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