N国党が始めた、批判者を標的とした「誹謗中傷示談金ビジネス」。被害者は心を病む人も

裁判の恐怖とパニックに怯える一般市民たち

 平穏に暮らす一般人が、ある日突然、ネットに書き込んだ政治家への批判を名誉毀損だと言われて国政政党の代表に訴えられる。これはなかなかの恐怖だ。相手は年間1億6000万円ほどの政党交付金を得るほどの「巨大組織」。一方の訴えられた市民は、活動家でもなければ、N国党の動画を見て感想を述べただけのごくごく普通の一般人である。  いくら一般人が正しかったとしても、ひとたび裁判を仕掛けられてしまえば、どうしても悪そうなイメージは作られてしまうし、潔白を証明するために弁護士を立てれば、数十万円の出費は避けられない。NHKから国民を守る党は党員も支持者もいる組織だが、私たちは個人である。多くの人は裁判と無縁の人生を過ごしてきただろうし、圧倒的に力の差がある相手から訴えられれば、パニックになってしまうことだろう。  立花孝志から裁判を予告され、指定の口座に30万円を振り込むように要求された一人は、国政政党という巨大な組織に狙われた恐怖から精神的に追い込まれ、入院を余儀なくされている。医師の見立てでは退院するまでに3ヶ月ほどかかるという。それまで仲睦まじく平和に過ごしてきた一つの家庭がメチャクチャに『ぶっ壊された』瞬間だ。  まるで当たり屋に狙われてしまったかのようだが、開示請求をしている当の福永活也弁護士は、こうした人たちを「当選者」と呼んでいる。
開示請求が認められたアカウントを「当選者」と読んでいた福永弁護士のツイート(削除済み)

開示請求が認められたアカウントを「当選者」と読んでいた福永弁護士のツイート(削除済み)

「ビジネスのチャンス」と口を滑らせた立花孝志

 政治家に対する批判は、多少汚い言葉を含んでいたとしても、名誉毀損に問うことはなかなかできない。そんなものがいちいち引っかかっていたら自由な言論ができなくなってしまい、政治に対する真っ当な批判さえできなくなってしまうからである。だから、もし立花孝志に裁判を仕掛けられてしまったとしても、応じずに冷静に受け流していただきたい。また、もし不安があるのなら、警察に相談してもいいだろう。  確かに、誰かを誹謗中傷することはあまり良いことではない。しかし、唯一の公約である「NHKをぶっ壊す」には取り組まず、前傾したような迷惑行為を繰り返す政治家が、市民からどれだけ口汚く罵られたとしても、そんなのは当たり前である。それが嫌なら、とっとと公約を実現してアピールするなり、迷惑行為を行うことをやめて真摯に政治活動を行えばいいだけのことである。ガタガタ言えるのは公約を実現してからではないだろうか。  立花孝志は、一体、どういうつもりで裁判を仕掛けているのか。10月21日に行われた党定例会で、立花孝志はこう話している。 (01:42:34~) 「まあ、計画ではもっとパンパンパンと通っていく予定やったんやけど、残念ながら坂本君が落選してから、もうずーっとやもんな。おらへんやろ。あそこがたぶん、あ、そうだ、新座が行ったんか。まあ、坂本君が悪いわけじゃないかもしれません。  あの、まあまあ、党としてこう上がって、今、下がっているという、もうこれ一回。名誉毀損に関し、名誉毀損の裁判をめちゃくちゃやってるけど、あの、さすがにあんだけインターネット上でムチャクチャ書かれてたら確かにそりゃまずいなというのも、ちょっと思ったので、ここは本当にガンガン行きます。で、昨日も10万円振り込んでもらってます。で、これから本当に、名前と住所を入れてくれた人は10万円で、名前ない人は30万円、それが納得できへんかったら、もう裁判しましょうって返してます。  で、今日も裁判所行ったら、あのまた別の弁護士さんに声をかけられて一緒にメシ行ってきたんですけど、まあ、あの、その人も名誉毀損のことを取り上げている弁護士さんなんで、これからそこはどんどん、だから、木下優樹菜さんなんかは、ちょっと声をかけて一緒にやりませんか言うて、言ってもいいのかなとは思ってますけど。まあ、新しい層を何って言うのかな、ビジネスのチャンスのところなのかな、べつにビジネスのためにやってるわけじゃないんだけど。  あの、まあ、誰がっていうのは公開しないですけど、まあ、自首してくる人って、もう本当に可愛らしいね。人の悪口さんざん書いといて、ごめんなさいごめんなさいって言うのは、可愛いね。二十歳の学生だったり、40過ぎのオッチャンだったり。あの、可愛らしい声した女の子がね、声可愛いのに書いてることえげつないなっていう。あの、電話してくる人もいれば、Twitterのダイレクトメールで来る人もいるし、党のメールで来る人もいるし、ショートメールで書いてくる人もいます。ただやっぱり、あの最初はね、お二人無料でって許したんですけど、弁護士さんからも注意があって、これはやっぱり交通違反をしたら反則金を払うのと同じで、やっぱり幾ばくかのお金を取らないと、既に弁護士が動いて裁判所も動いてるんだから。それを無料にするっていうのは、ちょっと問題があるでしょうというご指摘を受けたので、まあ、10万円はいただこうかということで、本人に対する反省を促すという意味で10万円と」  立花孝志は確かに「ビジネスのチャンス」だと口を滑らせた。慌ててビジネスのためにやっているわけではないと訂正したが、後の祭りである。  さらに驚くことは、示談金を取るように指示しているのは弁護士だということだ。交通違反をしたら反則金を払うのだから、誹謗中傷をしたら10万円払うべきだと滅茶苦茶な理論を展開しているが、自首してくる人を可愛いなどと言っている時点で、本当は名誉を傷つけられているなんて感情は一切ないのではないだろうか。  日本に9つしかない国政政党がやっている恐喝まがいの裁判ラッシュ。これは紛れもなく国家レベルの大問題だ。こんな政党に騙されて投票してしまった有権者は、今、こうして起こしている数々の事件や騒動をしっかりと見てほしい。 <取材・文/石渡智大>
普段は選挙ウォッチャーちだいとして日本中の選挙を追いかけ、取材。選挙ごとに「どんな選挙だったのか」を振り返るとともに、そこで得た選挙戦略のノウハウなどを「チダイズム」にて公開中
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