バス業界のブラック化の構造的原因とは? 「ブラック企業探偵団」著者が分析!

大熊将八

乱立状態が招く査察機能の低下

 また、「小さな会社が乱立している」状態は、以前はきめ細かくできていたバス会社に対する査察機能の低下も招いた。国交省の査察担当は全国でたったの約350人しかいないのである。平成26年度時点の事業者数が4477社(国交省資料より)あることを考えると圧倒的に不足している。最近は国交省だけで監督機能を果たせなくなり、総務省も参画させようとする流れがあるほどだ。

 もっとも、この査察自体も有名無実化しているのが現実だ。仮に査察で引っかかったり、軽微な事故を起こしたりしても現行の日本の法律では懲罰的罰則に至らず、違反点数が課されるだけなのだ。つまり、事業者が開き直って違反しても、課徴金を払うなどのコストは低く、その分だけバスの稼働率を上げたほうが会社としては儲かるわけで、結果として無茶なスケジュールで運行させる会社が跡を絶たなくなるのだ。

 今日のバス業界では、「収益最大化する稼働率は、事故が起きるかギリギリのところにある」というモラルハザードが起きているのだ。

人件費削減で優秀な人材確保が難航

 さらに、バス会社経営において人件費は平均でコスト全体の55%強と、他の業界に比べて非常に高い。アベノミクスによる景気回復に伴う人件費の急上昇は会社の利益を逼迫し、ますます稼働率を無理にでも上げるインセンティブが働くのである。

 人材確保には別の問題もある。そもそも、バスを長距離、安全に運転するのには高度なスキルが求められることだ。そのため、規制緩和する以前はバス業界の平均年収は日本の全産業の平均を上回っていたほどだった。しかし、今や社員の平均年収は400万円を割り込むほどになっている。

 優秀な運転手が報酬の高い他業界に流れていく一方で、バスの稼働率だけは急上昇している。急に優秀な人材を大量に採用することは難しいため、本来求められている質よりも低い運転手でも採用せざるを得なくなっていると言える。

 まとめると、「とにかく収益を上げるために、人材の確保もままならないまま、少しでも稼働率を上げようとしている」のがバス業界全体を取り巻く現状なのだ。

それでは、どうやって「ブラック化」を免れ、規制緩和で競争が激化するこの業界を生き残っていけばいいのだろうか。

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バス事業者の活路はありや?

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