「ブラック企業」大手4社に大手6金融機関が3000億円の投資!?

 従業員を劣悪な労働環境で働かせ、時には死へと追いやる「ブラック企業」。昨年は「ブラックバイト」という言葉にも注目が集まった。  金融機関の投融資が環境破壊や人権侵害に注ぎ込まれないよう、情報公開活動を行うNGOプロジェクト「フェア・ファイナンス・ガイド日本版」は昨年11月、同NGOが「ブラック企業」と判断した4社に対する大手金融機関の投融資状況を調査したレポートを発表した。  対象は居酒屋チェーン「日本海庄や」を展開する大庄、ヤマダ電機、ワタミ、牛丼チェーン「すき家」などを手掛けるゼンショー。いずれも過労死(大庄)や過労自殺(ヤマダ電機、ワタミ)、残業代の不払いや不当労働行為(ゼンショー)などを起こして大きく報道された大企業だ。  レポートによると、三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、三井住友トラスト、農林中央金庫の6金融機関が上記4社に対して行った投融資額は、2011年1月~15年8月の間に合計で約3000億円。この内、みずほが1621億3000万円、三井住友が991億6000万円と飛び抜けて多く、これに三菱UFJの299億8000万円などと続く。  レポートは「各銀行がCSR(企業の社会的責任)の観点も加味して策定する『投融資方針』が、ブラック企業への歯止めとしてはほとんど機能していない」ということも指摘する。  例えば、投融資した企業が団結権と団体交渉権を保証することを、投融資方針で奨励しているかどうかを見てみると、三井住友トラストが融資の全般と投資の一部に関して奨励。三菱UFJ、みずほ、三井住友はプロジェクトファイナンス(特定の事業に絞った融資)に限り奨励している。  ところが実際には、三井住友トラストは、労働組合の団体交渉権を長年に渡り認めてこなかったゼンショーに18億円余りを投融資。投融資方針と一致していない。また、ブラック企業4社がプロジェクトファイナンスで投融資を受けている可能性は低いと見られる。このように、金融機関からブラック企業への投融資は、実際には歯止めがかからない「ザル状態」と言うことができる。
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