アニメの製作委員会に見る「お金×リスク×作り手」の微妙な関係

石田恒二
 アニメなど映像作品のエンドロールで見かける「○○製作委員会」。アニメ業界における、この”製作委員会”方式のビジネスモデルはどうなっているのか?

風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ

“製作委員会”方式は、企業各社が作品の制作から関連アイテムの販売までを分業するシステムだ。従来は、制作会社と広告代理店が資金を工面して制作・放映にこぎつける体制だった。ヒット作が生まれれば利益は両者の総取りというメリットもあったが、鳴かず飛ばずに終わった場合、グッズの売れ残り在庫や負債を両社で背負うことに。なかには、倒産や合併という憂き目に遭ったり、制作部門を廃止して版権管理会社になる企業もあった。

 このリスクを分散させたシステムが製作委員会方式だ。始まりは、宮崎駿氏が手がけた映画『風の谷のナウシカ』で採用した「風の谷のナウシカ」製作委員会だと言われている。出資企業2社のうち徳間書店が製作、博報堂が映画化・全国ロードショーを手がけ、7.4億円の配給収入を得る成功を収めた。TVアニメでは『新世紀エヴァンゲリヲン』のヒット以後、製作委員会方式が広まっていった。

 では、製作委員会に参加したプレイヤー――つまり出資企業が得られるものは何か。一番に挙げられるのが、作品にまつわる権利だ。各企業は、制作資金をサポートして金銭的リスクを負う代わりに、ロイヤリティや作品の商品化権を得る。関連グッズやDVDの展開、映画興行など各方面での企業間の権利争いが少なくなるのもメリットだ。一方、権利関係が複雑化して、海外展開や多様なメディアミックス展開に権利処理が追いつかなくなるケースも存在する。

 実際に作品をつくるアニメーターなどの労働環境や報酬体系も問題になっている。制作委員会に参加する各企業は、出資した額に応じて利益が配分される。制作会社もそのうちの一社に過ぎず、作品を制作する現場のクリエイターまで十分に還元されるだけの利益を確保できるかわからないまま、見切り発車でプロジェクトを進めるケースも多い。アニメ制作会社「A-1 Pictures」の元従業員が、アニメ制作の過労によるうつ病が自殺の原因だと労災認定されたニュースも、問題の深刻さを物語っている。

 他方、新たな動きもある。昨今話題のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」では、制作チームが新作アニメの制作資金を公募するケースも目立ってきた。例えば『Under the Dog』プロデューサーの小笠原さんはユーザーに出資を呼びかける動画内で、アニメの製作委員会が面白いものより売れるものを目指す傾向について危惧する。そのためKickstarterで資金を集め、自分たちが純粋に面白いと思うものを作りたいと語る。

 作品作りには多額の資金が必要だがリスクは取りたくない。かといってリスクを取らなければ受け取る収益が減って、クリエイターに十分な報酬を還元できない。

 お金とリスクとクリエイティブは、アニメ作りには切っても切れない微妙な関係だ。面白いアニメを作る最適なビジネスモデルとは? 1年後には、クラウドファンディングや株式上場で多くの制作会社が自主的に資金調達を実施、はたまた技術の進歩でアニメ制作が手軽になりインディーズアニメが興隆しているかもしれない。作り手の立ち位置が変われば、出来上がる作品のテイストも変わる。だからこそ、アニメの未来に期待したい。

<取材・文/石田恒二>

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