「好感度低い芸人」キンコン西野氏が語る、「何者かになる」ための3つの方法

左からクリエイターズマッチ社長の呉京樹氏、西野氏、司会の田中研之輔氏

「好感度低い芸人」「炎上芸人」などと言われつつも、出す絵本は驚愕のクオリティで世間の度肝を抜き、2000席の独演会を満員にする男、キングコングの西野亮廣氏。

 そんな彼が、12月14日に東京は御茶ノ水のデジタルハリウッド大学駿河台キャンパスの教壇に立ち、同校の社会学概論の講師である田中研之輔氏の司会のもとで、クリエイターズマッチの代表取締役社長である呉京樹氏とともに講演を行った。

 デジタルハリウッド大学に通う学生と当日集まった一般客の前で、西野氏自身が語った自身の活動への哲学は、クリエイターのみならずビジネスピープルにもヒントになることが多い内容だった。その一部を紹介しよう。

【1】敢えて自分にとって一番「便利」なものを捨ててみる

 デビューからトントン拍子で冠番組を獲得し、収入も上がったし、生活も良くなったし、知名度も増えた西野氏だが、かつて自分が思い描いていた「スター」像に到達していないことにジレンマを抱いたという。

「人気タレントにはなったと思う。でも、僕がなんか起こしたら時代が動いちゃうような、凄い影響力みたいなのは兼ね備わってないなと思って、で、やべえと思ったんですよ。知名度も増えてゴールデンの、いわば四番で打席に立たせてもらって、追い風も吹いてるのにそのタイミングでホームラン打ててない。そう気づいた時に、この先、30代40代50代の自分がなんとなく見えちゃった。50歳でも芸能界にはおるやろうけど、右肩下がりでなんとなく出てる奴になちゃうなって。このまま行ってもビートたけしさんやウォルト・ディズニーには勝てないなって。僕、本気で勝ちたいんすよ。でも今のままじゃ絶対無理だって思った。だから、ひな壇とかグルメ番組に出るのはもう辞めるって決めたんです。テレビで60点とか70点くらいは取れる芸人になってて、僕にとってはめっちゃ便利な存在でしたが、その便利なものを切っちゃおうって。便利なものがないと、人は他のところでどうにかしようとするでしょう。それくらいしないと突き抜けられないと思う」

【2】何かやろうと思ったら、ひたすらそれに打ち込んでみる

 テレビ出演を辞めた西野氏は、決まっていた収録以外はすべて辞めた。結果として週休5日とか6日くらいになったという。

巧みにジョークを交えつつ、自身の考えを語る西野氏

「もうニートみたくなっちゃって。一か月くらい飲み歩いたんだけど、ある時タモリさんに呼び出されて、「お前絵描いてみれば」って言われて。そのときから絵を描き始めたんすよ。で、絵本を作ろうと思ったんだけど、実際どうしようかと思ったんです。というのも、僕自身絵本なんか出すタレントは今までずっと悪口を言ってきた(笑)。だってそうでしょう。絵とかずっと勉強している人からしたら、あいつらタレントだから絵本出せただけだろって思う。僕もそう思っていたわけです。だから僕も確実にそう思われるなって思ったんです。でもそういう声を黙らせたい。じゃあどうすればいいか。プロに勝たないと意味が無い。でも僕は画力も負けてるし、出版のノウハウも知らないし、コネもない。絵本の描き方自体わからない。勝てるところはどこだろうと考えた時に、『一冊を作るのに費やす時間なら勝てる』と思ったんです。プロの方はそれが生業だから生計を立てるためには結構短いスパンで作品を出さないといけない。でも僕は本業ではないし何しろ半ニートみたいな状況。一冊作るのに極端な話10年とかだって掛けられる。だから文房具屋で一番細いペンを買って、細密な絵にするようにして物語も長くした。ああいう絵にしたのは、とにかく時間を掛けて書き込むような感じにすればプロの人と競い合うこともなくなるかもしれないと思ったんです」

【3】「何もない」ときは、とにかく信用の幅を広げる

西野亮廣氏

90分の間、熱の籠もったトークを展開し、学生や一般客も耳を傾けた

「僕の後輩に小谷という奴がいます。無職なのに3年で20kg太ってしかも結婚して超幸せなんすよ。無職の彼がどうやって食ってるかというと、自分の一日を50円で売ってるんです。草むしりをしても行列に代わりに並んでも1日50円。普通の人の感覚だと、一日働けば7000円とか一万円ちょうだいってなるじゃないですか。でも50円。これをするとどうなるか? 例えば庭の草むしりを小谷に頼むとします。そうするとあいつは50円で朝からすげー頑張ってやるんです。で朝から昼まで頑張ったら、さすがに30歳をまわったおっさんを50円でこきつかって申し訳ない気分になるんですよ。で、昼ごはんくらい出すんですよ、頼んだ人は。で昼飯食ったらまた午後も一生懸命草むしりする。朝から夜まで働かせたら申し訳なくなって、夜ご飯も出したりするようになる。昼夜一緒に飯食ったら仲良くなって、ちょっと飲みに行こうかってなるんですよ。50円で買ってるけど、昼飯代、夜メシ代、飲み代まで出しちゃってる。しかも50円で働いてくれたことでめっちゃ感謝されるんです。これ入り口一万円貰ってたら昼飯代もないしそもそもそこまで感謝はされないと思う。こういう信用の積み重ねがどうなるか。それがわかったのはあいつの結婚式のときでした。小谷が無職のくせに結婚したいと言い出して。で、結婚式を挙げたいんだけどどうしたらいいですかって言うんですよ。毎日マックスで働いても一か月で1500円にしかならないくせに結婚式なんて挙げられるわけない。だからクラウドファンディングしてみろと言ってみたんです。これがなんと、3週間で250万くらい集まったんです。誰があいつに支援したのか? それは、これまで小谷のことを50円で買ってくれた人なんですよ。あの小谷くんが結婚するならそりゃ支援するよってどんどんお金を入れてくださった。それで一気に250万円達成して、浅草花やしきでド派手な結婚式を挙げられた。しかも100万円近く余ったからちょうどその時フィリピンが水害にあったんでそれを全部寄付した。無職のくせに(笑)。信用の面積をとにかく大きくしたら、結果としてマネタイズに繋がることがあるってのがどうやらわかってきたんです」

 もちろん、芸人として知名度がある西野氏だから……と突っ込む事もできるかもしれないが、彼の行動を裏付ける「西野流哲学」は伝わってくる内容に、1時間半という時間があっという間に過ぎたように思った学生や一般客も多かったはずだ。

西野亮廣氏

クリエイターズマッチの呉社長(左)も、起業までにお餅屋から現場監督まで30種類以上の職を転々とした異色のキャリア。西野氏も呉氏の話に感嘆していた

<取材・文/HBO取材班 写真/Shoya Oyama>

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