DeNA春田氏が語る会長退任の理由とこれから「仲間数人と始めて、どこまでできるか考えている」

【前編】「南場さんの本には書かれていないことを書いた」DeNA春田氏が明かす著書執筆の理由(https://hbol.jp/37392 ‘11年に家族の看病のため、南場氏が社長を退いた間、春田氏は、新社長の守安功氏を会長として支えてきた。しかし、今年6月、任期満了による会長退任に伴い、今度は春田氏がDeNAを退職する決断をした。 ―――今年6月で退社されますが、なぜ退社を決めたのでしょう?
春田真

春田真

春田:非常勤だった南場さんが2年前に復帰することにともない、僕は米国に行くことにしました。 その間、僕のDeNAにおける位置づけも変わってきた。 僕が海外に行っても会社はきちんと回っている。(僕が)いなくなっても大丈夫かなと思った。それと、6月の株主総会で会長に再任されると、(次の選任がある)2年後には48歳になってしまう。もともと自分で新しいことを始めたいと思っていたが、それだと(独立するには)気力的にしんどくなり、環境に慣れ過ぎて、新しいことも始めにくくなってしまうかもしれない。それもあったので、新しいことにチャレンジするため、この機会に退任することを決めました。 ――そもそも春田さんは当時の住友銀行を辞めて、無名のベンチャーに飛び込んだわけですが、なぜそんな思い切った決断ができた? 春田:思い切ったということもなかったんですが、まず大きかったのは独身だったこと。何かあっても1人なら何とかなると思えた。あとは、インターネットに興味があって、この分野は伸びると思ったし、何より面白いと思ったからです。イチからベンチャーを立ち上げるつもりはその当時はありませんでした。まずは大きな組織からベンチャーに飛び込んでみようと。 ――もともとインターネットに興味があった春田さんが、数あるITベンチャーのなかからDeNAを選んだ理由は? 春田:サイト上で求人を見つけて応募したというのはこの本にも書いたとおりですけど、それ以外にも実はいくつかポイントがありました。そもそも、インターネットに非常に興味があったというのがまず1つ。その中でインターネットオークションというサービスがまさにインターネット的で面白いと思っていた。その中で、たまたま、’99年8月の新聞に、リクルートとソネットが増資に応じて、南場さんたちがインターネットオークション専属の会社を立ち上げるという記事を見つけた。当時の部署で僕はマッキンゼーの人たちと仕事をしていた。それで、マッキンゼー出身の南場さんが会社を立ち上げるというので、それがまた大きなひとつのポイントだった。  また、環境的にも東証マザーズができて、ベンチャーが復興するとか。いろんなポイントがあったんです。 ――たまたまのように見えて、実は色々なきっかけがあったと。 春田:はた目には、たまたま求人を見つけて面白そうだったから転職したように見えるかもしれない。けど、そこで実際に行動するに至るくらいの気付きをいくつ重ねられるかどうかが大事かもしれない。そこにあるものが本当にチャンスかどうかなんて、わからないじゃないですか。でも、気付きがないと行動できない。僕の場合は、たまたまに記憶にヒットするものがあった。だから、行動することができた。 ――退職後は、何をされる予定ですか? 春田:まだはっきりとは決まっていないけど、ファンドみたいなことをやりたいと考えています。最初は仲間数人くらいで始めて、そこから何がどこまでできるかを考えている。大企業を飛び出して、ベンチャーをやってきた自分の経験を、どう次の世代に生かすか。若い起業家に経験を注入したり、複数の事業立ち上げをフォローしたりできればなぁと。  米国で仕事をして、社員と会社あるいはマネジメントとの関係というかあり方みたいなもの、また株主との関係が日本とは違うと感じました。DeNAの社員は本当に真面目で優秀。最近ようやく改善してきた会社の業績はここ2年で思うような結果が出せなかったけれど、それは社員ではなくマネジメントの責任であると。当たり前のことかもしれないけど改めて考える契機になりました。米国のガバナンスをそのまま日本に持ってきても恐らく上手く行かない。良いところをうまく日本にも導入できればと思う。読み物ではなく、実際に身を持って体験したのは大きいので、そこをもっと若い世代に伝えていければなと思いますね。 【春田真】 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA) 取締役 会長。’69年、奈良県生まれ。’92年に京都大学法学部を卒業したのち、住友銀行に入行。退職後、2000年にディー・エヌ・エーに入社。’11年6月取締役会長に就任。また、同年12月に株式会社横浜DeNAベイスターズ取締役オーナーに就任。’15年1月球団オーナーを退任、6月にはディー・エヌ・エーの取締役会長を退任予定。 <取材・文/井野祐真 撮影/根田拓也>
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