49人の写真家が追った、東日本大震災から10年。決して忘れてはならない悲しい記憶と復興への“絆”

 2月13日23時ごろ、地鳴りのような大きな振動を伴い、巨大地震が東日本を襲った。震源は福県沖。マグニチュード7.3、最大震度6強を記録した。幸いなことに震源が地下約55kmと深かったせいか、津波の被害は発生しなかった。

49人の写真家が追った、東日本大震災から10年

東日本大震災

津波で漁業の街は壊滅。港に停泊していた大型漁船は市街地まで運ばれた(2011年4月27日、宮城県気仙沼市=撮影/野町和嘉)

「10年前のことを思い出した」と語るのは、福島県飯舘村で酪農と農業を営んでいた長谷川健一さん。 「『あの時と同じだ』と感じて、いろいろな記憶がよみがえってきました。何よりも、津波が来るかどうかをまず心配しました」  この地震が起きた直後、共同監督した映画『サマショール~遺言 第六章』上映のため福島県に向かった写真家の野田雅也さんはこう語る。 「地震が来たとき、まず身震いがしました。それからいろいろな震災の記憶がよみがえってきて……。私は震災以降、現地に通い続けていましたが、その体感の後に被災地で見た光景や現地での痛ましい体験がフラッシュバックしました。被災者の中でも、10年前の震災のPTSD(心的外傷後ストレス障害)が再発したという人も多いと聞きます」
東日本大震災

震災から5年がたっても置き去りになっている墓の向こうに、福島第一原発が見える。この地区では、原発事故のため犠牲者の救助・捜索ができなかった(2016年2月16日、福島県浪江町=撮影/野田雅也)

ウイルス感染対策などより細やかな対応の必要性

 2月13日の大地震の後も、福島県周辺では地震が頻発している(’21年2月12日15時~19日15時の震度1以上の地震の観測回数は112回、そのうち2月13日の「震度6強」のほか、震度4が2回)。気象庁は「’11年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の余震と考えられる」と推定。また、政府の地震調査委員会は「今後10年間は大地震への警戒が必要」と発表した。
東日本大震災

今年2月13日の福島沖大地震で土砂崩れを起こした「エビスサーキット」(2月26日、福島県二本松市=撮影/新藤健一)

 奇しくもこの地震の直後に、’11年3月11日の東日本大震災時に現地に向かい、現場のリアルな姿をとらえた49人の写真家による写真集『災害列島・日本』が2月28日に発売となった。本書のキュレーターを務めた、元共同通信の新藤健一さんはこう語る。 「地震調査委員会は『もう少し震源が浅く規模が大きければ、高い津波が発生した』とコメントしていました。東日本大震災は、地震に津波、原発事故が重なった“複合災害”でした。ここ最近の災害は、単なる自然災害に別の災害がさらに重なり、人為的なものも加わっています。地球温暖化による異常気象、環境汚染、森林・生態系破壊、貧困と格差拡大、ウイルス感染など。今後はより広範囲できめ細やかな対応が必要となるでしょう」
次のページ 
10年経ってもまったく終わっていない
1
2
東日本大震災から10年 災害列島・日本

49人の写真家が伝える“地球異変"の記録

ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会