「安倍トレード」絶好の逆張り局面なのか、それとも!?

吉田 恒氏

吉田 恒氏

 為替相場は、1月末にかけて円高になりました。ドル円は117~118円中心に横ばい気味の展開になっていますが、ユーロ円中心にクロス円が軒並み大幅な円高になるなかで、円の総合力を示す実効相場は、昨年10月末の日銀追加緩和が行われた直後の水準まで上昇(円高)となりました<資料参照>。  ではこの円高はさらに広がるのか、それとも再び円安に戻ることになるのかについて、今回は考えてみたいと思います。円の実効相場は足元で90日移動平均線をわずかに上回ってきました。これは、少なくとも2013年以降では円高のピークが近い意味になります。 ※<資料>はコチラ⇒https://hbol.jp/?attachment_id=23683
安倍トレード

<資料>

 2013年以降は、円の実効相場が90日線を大きく上回る展開はありませんでした。そんな2013年以降のパターンが変わらないなら、足元の円高はクライマックスで、新たな円安の始まりが近いということになりますが、果たしてどうでしょうか。  それにしても、なぜ2013年以降、円の実効相場は90日線を大きく上回らない展開が続いてきたのでしょうか。それは株安などいわゆるリスクオフの拡大に限界があった点が大きかったと思います。  例えば、前回、円の実効相場が90日線で頭打ちになり円安に転換したのは昨年10月中旬でした。それは、「恐怖指数」とされるVIX指数の上昇が、20ポイントを超えたところで一巡し、下落に転じたタイミングとほぼ同じでした。  円高は株安とともにリスクオフの結果とされるのが基本です。その意味では、円実効相場が90日線で頭打ち、円安への反転を繰り返してきたのは、株安などリスクオフが、VIX指数が20ポイントを超えたところで行き詰り、リスクオンへ反転した影響が大きかったということでしょう。  さて、1月末に米株が急落したこともあって、VIX指数は足元で再び20ポイントをわずかに上回る動きになっています。では、今回も2013年以降のパターンに変わりなく、これはリスクオフの限界圏であり、いわゆる「逆張り」のリスクオン取引、つまり株買い、円売りが奏功する局面なのでしょうか。  株買い、円売りはアベノミクス相場の「安倍トレード」と呼ばれたことがありました。その意味では、足元は絶好の「安倍トレード」で逆張りに動く局面なのでしょうか。  気になるのは、VIX指数が20ポイントを超える動きの頻度が高まっていることです。2014年前半までは、「恐怖指数」VIX指数が20ポイント以上に拡大するのは半年に一度の割合だったのが、2014年後半は半年で2回起こり、そして今年1月はより頻繁にVIX指数の上昇が繰り返されました。  それにしても、昨年にかけて「恐怖指数」の安定が続いたのは、本質的には米株高基調が続いたことがあったでしょう。米株は2011年秋以降、10%以上といった大幅な反落のない上昇基調が続いてきました。そのなかでは、リスクオフの動きも限られ、結果としてVIX指数の20ポイント以上への拡大は一時的にとどまってきたということでしょう。  このような見方に立てば、米株が10%以上の大幅な反落に向うようなら、リスクオフは本格的な拡大に向かい、その中でVIX指数も20ポイントを大きく上回り上昇に向かう可能性は要注意になるかもしれません。  1月31日に発表された昨年第4四半期の米GDP統計で純輸出が大きく減少、また四半期決算発表などから、グローバルな景気低迷の影響がいよいよ米経済にも悪影響になってきた懸念が浮上してきました。そういったなかで、米株が10%以上の大幅な反落に向う動きになるようなら、リスクオフがさらに拡大し、円高が広がる可能性も要注意でしょう。(了) ◆2月の会場及びWEBセミナーのご案内 2月4日=100万ドルナイト為替予想セミナー 2月12日=為替の学校「FXアカデミア」予測編第1部 2月19日=月例WEBセミナー「マーケット先読みLive!」 2月21日=為替の学校「FXアカデミア」1Day・名古屋 http://www.m2j.co.jp/seminar/ 【吉田 恒氏】 1985年、立教大学文学部卒業後、投資情報会社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。 2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。 著書に『FX7つの成功法則』(ダイヤモンド社)など ●ツイッター http://mobile.twitter.com/yoshida_hisashi ●FXの学校「アカデミア」 https://www.m2j.co.jp/mp/my_fxacademia/
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会