「2025年の共通テスト」報道におかしな点あり。大学入試センターから注意を促す文書も

テスト

(adobe stock)

 10月21日のNHKの報道をきっかけとして、2025年の共通テストの情報が流れました。2025年の共通テストとは、現在の中学2年生が新学習指導要領の元で受ける最初の共通テストです。報道では、新たな教科である「情報」を新設したうえで、現在の6教科30科目を7教科21科目に再編するとしていました。  ところが、この共通テストの報道が、誤情報とまではいえないものの、誤解を与えかねない内容、不十分な内容であったため、10月23日に大学入試センターから注意を促す文書が出されました。なぜなら、報道は、検討中の内容が、あたかも報道通りに決まっていくような印象を与えるものになっていたからです。これについては、高校関係者からも「おかしいのではないか」という声があがっています。ここでは、その中で説明の足りなかった部分を補います。  

報道された内容の情報源は何か?

 まず、事実説明の出発点を整理しましょう。報道の中には、記事になった情報を「関係者の話」から得たとしているものがありますが、内容を考えると、その前日の10 月20 日に大学入試センターから、「全国都道府県教育委員会連合会会長」「指定都市教育委員会協議会会長」「全国市町村教育委員会連合会会長」「全国高等学校長協会会長」宛てに送られた「平成30年告示高等学校学習指導要領に対応した大学入学共通テストの出題教科・科目等の検討状況について」(入試セ企第74号、以下「文書74」と記す。) が元になっていると考えられます。  これには、最後に「本件に関して、御意見等がある場合には、貴団体においてお取りまとめいただいた上で、令和2年11月30日(月)までに御連絡いただくようお願いいたします」とあり、これらの団体の意見によっては今後変わりうるという内容です。  したがって、現在の共通テストが6教科30科目から7教科21科目になる場合もあれば、ならない場合もあり、また報道で発表される内容が一部変更されることもあります。(一部報道には「検討中」と書いてあるものの)あたかも、報道通りになるような表現もありましたが、そうならないこともあるので、10月23日に大学入試センターからホームページで、次のような通達があったのです。 「新学習指導要領に対応した令和7年度からの大学入学共通テストの出題教科・科目等について報道がありました。大学入試センターでは、これまで、幅広い分野の専門家のご参画を得て、令和7年度からの大学入学共通テストの出題教科・科目等についての検討を行っているところです。この度、途中段階ではありますが、一定の方向性について整理を行いましたので、大学入学共通テストを共同で実施する大学関係者はもちろん、高校関係者に対しても情報提供を行い、ご意見を伺っているところです。今後、いただいたご意見をもとに、必要な修正を行ってまいります。(原文ママ)」  さて、以下においては、報道の情報源が何かではなく、10月20日に大学入試センターから提示された「文書74」を元に説明します。

共通テストで「情報」が入るというが

 新学習指導要領では「情報I」「情報II」が設定されることになっていますが、「文書74」では、そのうちの必履修科目である「情報I」を「情報」として共通テストの試験科目にしては「どうか」と書かれています。  もちろんこの「情報」が、今後、共通テストの科目になる可能性もありますが、第15回大学入試のあり方に関する検討会議において、国立大学協会の岡正朗委員から「入試科目にするのであれば、教員が本当に全国にいるのか、どのレベルまで同じにできるのか」という懸念も出されています。したがって、今後どうなるのかはまだわからない状況です。  なお、一部報道で、新学習指導要領で「情報が必修に入る」というものがありましたが、現行課程でも「情報」という科目(「社会と情報」「情報の科学」)はあります。  この科目としての「情報」は2003 年から実施されましたが、その時点でそれを教える専門の教員がほとんどいなかったことから、当時の教員が決められた講習を受ければ、比較的簡単に追加の形で「情報」の教員免許を取れる形になりました。  この結果、数学の教員が「情報」を担当することが多いものの、「理科」や「家庭科」の教員が担当している例が私のまわりにもいます。この延長での現在なので、「情報」の教員には、知識が浅い人も多く、そのような現状を岡委員は心配されているのでしょう。したがって、「情報」を共通テストの科目に入れる前に、教える側の質も向上すべきなのです。
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