コロナで始まった欧州での職人生活。リノベーションや文化財の修繕で感じたこと

 世界的なコロナウイルス感染拡大の影響で、旅行先のヨーロッパから帰国できなくなってしまった筆者。現在は遠隔で仕事をしながら、移住も視野に入れつつ、ポーランドで居候生活を続けている。

古くても不動産価値は上昇

トルンの旧市街の様子 居候生活を始めた顛末や、その後の生活については、以前も当サイトで紹介しているので、詳細は割愛させていただこう。早い話が、コロナの影響で期せずしてヨーロッパで暮らしているのだが、リモートだけでは収入に限りがあるため、並行して日雇いの肉体労働を始めることになったのだ。  その肉体労働というのは住宅のリノベーション文化財の修復。地震や台風のないヨーロッパでは、旧市街や普通の街並みを歩いていても、築100年などの建物は珍しくない。  年数が経過するにつれて価値が下がっていく日本とは対照的に、繰り返しリノベーション(リフォーム)を行っていくことで、快適な住宅環境を維持し、不動産価値を上げていくのが一般的だ。  筆者が滞在しているポーランドでは、住宅は大きく「ドム」(戸建)、「ブロック」(団地のような集合住宅)、「カミェニツァ」(石造りのマンション)の3つにわけられる。それぞれ長短があるのだが、今回はリノベーションを手伝うことになったカミェニツァについて説明したい。

築数百年の石と煉瓦造りの建物

 カミェニツァは多くのものが戦前に建てられており、なかには中世まで歴史が遡るものもある。日本とは逆に、建物は古いほうが街の中心地に近いことが多く、天井が高くて広々としていることが多い。  また、石と煉瓦で作られているため防音性は抜群。熱を通しにくいので、夏は涼しく、冬は暖かさを保ってくれるのだ。  デメリットとしては、水回りのトラブルや、エレベーターのないものが多いこと。古いだけに修繕費など、維持にお金がかかることなどが挙げられる。かつては栄えていたが、今は利便性こそ高いものの、老朽化が進んでスラムのような状態になっているところもある。これらは後述する文化財の修復と同じく、自治体によって修復や修繕の程度によるので、ケース・バイ・ケースだ。
次のページ 
無限に作業が増える「リフォーム」の影
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会