欧州ではサッカーに次ぐ人気!? 車上の格闘技「スピードウェイ」の魅力

 ブレーキのないバイクで砂煙を上げながら、時速100km以上のスピードで、肘や膝で押し合いダートトラックを突っ走っていく……。映画『マッドマックス』の話ではない。欧州でサッカーに劣らぬ人気を誇るオートバイ競技「スピードウェイ」だ。

過去には日本製マシンも日本人ライダーもいた

スピードウェイの様子1  日本のモータースポーツファンにはあまり馴染みのない競技だろう。かくいう筆者も初めて動画を観たときは、「NASCARのバイク版みたいなもんでしょ」というのが正直な感想だった。スピードウェイは260〜425mのトラックを約1分程度で4周する競技で、素人目にはドリフトをしながらグルグル回っているようにしか思えない。  しかし、欧州では冒頭で述べたとおりサッカーに次ぐ人気を誇るスポーツで、ファンの熱狂っぷりはそれ以上とも言えるほどだ。実際の試合における迫力、技術性、戦術性においても同じだ。  スタジアムに漂う純メタノール燃料、そして巻き上げられたトラックの砂煙の匂い……。残念ながら、これらを正確に伝えるには筆者の筆力では表現しきれない。そこで今回は、ポーランドの強豪チームのひとつであるアパトル・トルンの監督で、元スピードウェイ・レーサーのトマシュ・バイェルスキ氏に、スピードウェイの魅力について語ってもらった。 「一言でスピードウェイを知らない人に伝えるなら、『アドレナリン』だ。今はほとんど見ないけど、前にはヤマハとかホンダみたいな日本車も走ってたし、日本人の選手もいたね」

100年近い歴史でサッカーに次ぐ人気

スピードウェイの様子2  日本では知られていないため新興スポーツと思ってしまいがちだが、初のスピードウェイの大会は1923年に行われており、実に100年近い歴史がある。アパトルがプレーしているアリーナも、1962年に建設されている。 「強いのは、ポーランドスイスデンマークあたりだね。ポーランドではサッカーの次に人気があるスポーツだよ。一部リーグ(エクストラ・クラサ)所属のサッカーチームがある大都市以外は、スピードウェイのほうが人気なことも少なくない。選手にイケメンが多いから、女性客も多いしね(笑)。俺がスピードウェイの選手になったのも、女にモテたいからさ(スタッフから、『監督、本当のことを話してください……』との声が)。柄の悪い連中もいるサッカーより、家族で楽しめるスポーツだよ」  基本的にはグルグルとトラックを回っていくわけだが、他のモータースポーツとは、何が大きく違うのだろう? 「似てると言われるのはNASCARだよね。ただ、スピードウェイはトラックを準備するのが難しい。トラックの路面にはいろんな成分が混じっていて、それが大きく勝敗を左右するんだ。選手が特に気を遣わなければいけないのは、スタートと最初のコーナーだね。ただ、一流と言われるいい選手は、そこで出遅れても取り戻せるものさ」  細かくされた頁岩花崗岩煉瓦ドロマイトなどが敷き詰められたトラックの調整は、ホームチームの大きなアドバンテージとなる。相手チームには試合前に2名のみ試走が許されるが、グリップの効く位置や加速ポイントを見極めるのは容易ではない。
次のページ 
命知らずなスピードウェイ選手だからこそ必要な「恐怖心」
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会