歌って踊りたいのにできない!卒業、解散、貧困……コロナ禍アイドルの悲鳴

 ライブ・エンタメ業界の損失額、約6900億円――。新型コロナウイルスによって相次ぐライブ延期や中止に、アイドル活動の停滞が余儀なくされている。彼女たちが直面した現実は、夢見るアイドルにとってあまりにも残酷だった
コロナ禍アイドルの悲鳴

ライブハウスの入り口では検温が行われ、体調を確認する貼り紙で感染防止を呼びかけている

「月謝を払ってください」事務所の提案にもう限界

 「ライブ前に検温をお願いします」「こちらの用紙にお名前と住所をお書きの上、身分証のご提示をお願いします」「公演中はマスクとフェイスシールドの着用が必須、声出しはNGとなっております」  8月、都内某所で行われたアイドルライブでは、新型コロナウイルス対策のため厳戒態勢が取られていた。  ぴあ総研によれば、ライブ・エンタメ業界が受けたコロナによる経済損失は、年間市場規模の8割弱に相当する約6900億円。当然、資金力に乏しい地下アイドルたちは、生き死に関わるほどの苦境に追いやられている。 「コロナの影響で解散することになりました」  重い口を開けたのは、都内のアイドルグループに所属していたユキさん(仮名・28歳)。昨年の夏にデビューし、小規模のイベントを重ね、これからという時期にコロナが直撃した。 「今年の冬からイベントの数が激減して、4月の緊急事態宣言が発令されたあと、事務所から『赤字が続いているので活動するなら月謝として月1万円払ってください』と言われました。月謝を払ったところで、ライブがいつ開催できるかわからない状況で、一応私は事務所が言う集客ノルマを必ずこなしてきたのに、そうでないメンバーと同じくお金を徴収するなんて……。ショックでした」

事務所からの提案にメンバー間にも亀裂が

 突然の事務所からの提案に、メンバーとの関係にも亀裂が生まれてしまう。 「私は月謝制が腑に落ちなかったんですが、それでも活動したいというメンバーもいました。話し合いをしているうちに揉めてしまい、このメンバーで活動を続けていくのは難しいという判断に至りました。コロナで思うように活動できないことが、結果的に自分の活動を見つめ直す期間になって、モチベーションの個人差が大きくなっていたんだと思います。解散ライブは行わず、自然消滅して終わりそうです」  同じくコロナ禍で所属していたグループが解散したミクさん(仮名・26歳)は、アイドルとして再起を目指しているというが、その生活は悲惨な状況だ。 「コロナ前は歩合制で月平均10万円ほど収入がありました。コロナの影響が出始めた3月からは、アイドルを含む芸能活動のギャラは完全にゼロ。アルバイトの面接もいくつか受けたのですが不採用続きで、貯金を取り崩しながら生活しています。最近の収入は特別定額給付金の10万円のみです。9月にはイベントをやる予定ですが、それもできるかどうか……」  彼女たちのグループが解散したように、アイドル活動を見直す動きは後を絶たない。  “病みかわいい”をコンセプトに活動する「ぜんぶ君のせいだ。」は、7月末に活動休止し、メンバー2人が脱退。大阪・西成発のアイドル「WEAR」など3グループが所属するカンヌエンターテイメントは、その組織の解体、グループの解散を発表した。  コロナの影響と明言せずとも、解散・卒業するアイドルが続出し、アイドル業界全体に停滞感が広がっている。
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デビューライブがどんどん延期に
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