デモ、暴動、正義。BLMに賛同し政治化するポップスターたちの訴え。

Protests Continue In Baton Rouge After Police Shooting Death Of Alton Sterling

Photo by Mark Wallheiser/Getty Images

Black Lives Matterに世界中のアーティストが賛同

 5月25日のミネソタ州ミネアポリスにおける警察官の非人道的で人種差別的な暴行によるジョージ・フロイドの死に対して、英米だけでなく、K-POP、インドや中東など世界中のアーティストや俳優たちがBlack Lives Matterに連帯している。  そりゃそうだろう。人種や国籍で音楽や映画の才能を抽出するのは無理な話だ。ポップミュージックには真善美を求める意思があって、周囲の通行者らが抗議しているのに警官が黒人の首を押さえつけ殺害してしまう、というのを許しがたいことだと思うのは当然だ。  彼(女)らの発言や行動にもかなり様々な動き方がある。ツイッターやインスタグラムで賛意を表明するだけでなく、デモ行進に行ったり、巨額のカンバを行ったりと。    たとえばビリー・アイリッシュは昨年史上最年少でグラミー賞を受賞したアーティストだが、特筆すべきは「Black Lives Matter(黒人の命が大切)」を掲げる抗議行動への批判として「All LIVES Matter(全ての命が大切)」という標語が出現したことに対し「クソ野郎どもはいつでも話題をすり替える」と激怒したことはあまりにも有名だ。
この投稿をInstagramで見る

BILLIE EILISH(@billieeilish)がシェアした投稿

 ともあれあまりにも多くのアーティストたちがBLMに連帯していて、誰それが賛同した…というのを挙げていくだけだと、単なるBLMへの賛同者リストになってしまうのが悩みどころだが、ここは筆者の独断でとくに特記した方が良いものについて述べていく。

K-POPファンの足並みそろった抗議行動

 様々な形での事態に対する連帯、団結が広がる中、層として非常な団結を示したのがK-POPペン(ファン)勢である。  K-POPのファンは世界中にあまねく存在するが、テキサス州ダラスの警察による、違法行為監視を名目にした市民の相互監視用アプリや、右派のハッシュタグ「#White Lives Matter」などに、自らが好むK-POPアーティストの画像などを大量に投下しまくりその機能を麻痺させてしまうなど、インターネットなどの世界で大暴れしている。K-POPのペンたちが展開しているのは、まさにSNSなどサイバー空間での反レイシズムの“人民戦争”と呼べるだろう。BTSのペンをARMYと呼ぶのは示唆的でもある。  また、BTSのBLM関係団体に対する寄付に呼応して、有志のファングループ「One in an ARMY」が「#Match A Million」キャンペーンを展開。24時間以内に目標額の100万ドルを達成している。  BTSが100万ドルをBLMに寄付したことはインパクトのある話だが、彼らがポリティカルというか、ヒューマニスティックな何かを行なったのは初めてではなくて、たとえば2018年のLove Yourselfキャンペーンに言及しておくのは必要だろう。  大変な状況にあっても、世界の若者が自己を愛することができるように、というユニセフでの感動的なスピーチがある。このような積み重ねがあってのBLMに対する寄付といった行動である。
次のページ 
平和な抗議と騒乱、暴動、略奪がシームレスになっている
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会