国会に届いた #WeNeedCulture の声。山添拓議員の質疑から浮かびあがる政府方針を検証

wncyamazoe

国会で質疑に立つ共産党の山添議員(筆者のYou Tubeチャンネルより)

「#WeNeedCulture」の動きを国会で突きつけた共産党の山添拓議員

 映画・演劇・音楽の3団体(SAVE the CINEMA、演劇緊急支援プロジェクト、SaveOurSpace)が連携して文化芸術復興基金の創設を目指す #WeNeedCulture の動き。2020年6月12日の参議院予算委員会で共産党・山添拓議員は約14分間・全10問にわたって、閣僚3名(安倍晋三総理、萩生田光一文部科学大臣、梶山弘志経産大臣)にこの問題を質問した。山添議員は質問の際に #WeNeedCulture と大きく表示されたパネルを掲示しており、質疑を生中継したNHKを通して全国に放送された。本記事ではその全10問の質問と回答の要約*を示しながら、政府の文化芸術に対する支援方針を確認していきたい。 〈*要約ではなく実際の発言を確認したい場合は筆者のnoteで公開中の全文文字起こしを参照ください〉  また、質疑のノーカット映像(字幕、質問と回答の要約付き)は筆者のYoutubeチャンネル「赤黄青で国会ウォッチ」で視聴できる。 20200612-1  以下、全10問の質疑を要約で紹介する。 ✳︎質問に対する回答に相当する箇所は青字、回答が無かった質問内容は赤字で記載する

「#WeNeedCulture」 の動きに3人の閣僚はどう答えたのか

【1問目】 山添拓議員:「文化芸術復興基金創設の動きがある中、総理はミニシアター、小劇場、ライブハウスをどういう場だと認識?安倍総理:「映画や音楽、演劇など多様な文化芸術の創造発信を支える一つの場として重要な役割を果たしていると認識している。」  まず、1問目では、ミニシアター、小劇場、ライブハウスは規模は小さくても「創造発信を支える場」として総理が重要視していることを確認できた。 【2問目】 山添拓議員:「文化庁の第2次補正予算案はミニシアターやライブハウスも支援対象?萩生田文科大臣:「対象などの制度設計は検討中。ライブハウス等は経産省の小規模事業者持続化補助金の対象のため、文化庁の事業との重複が起こらないようにする。文化芸術収益力強化事業では、これらの施設が行う新たな収益力向上の取り組みを制度の対象とする。」  1問目で安倍総理は「重要な役割を果たしている」と前向きな答弁をしていたが、直後の2問目で萩生田文科大臣は肝心の支援については「検討中」と答弁。また、「経産省と文化庁の支援内容の重複を避ける」という消極的な答弁も見られる。ちなみに文化芸術収益力強化事業についても言及しているが、これは「コロナ後を見据えた新たな市場の開拓・事業構造改革」「新しい鑑賞環境の確立など収益力確保の取り組み」の経費支援である。具体的には、公演の動画配信、舞台裏ツアー、役者との交流など。すでに被った損失を補償する事業ではない【3問目】 山添拓議員:「2問目ではハコモノや事業者は経産省の管轄だという答弁だったが、ミニシアターやライブハウスの独自性を生み出しているキュレーターは文化の担い手だと認識している?萩生田文科大臣:「キュレーターは文化の担い手だと認識している。また、第1次補正予算では対象にできなかった多種多様な勤務形態の方々も今回の文化庁の支援メニューでは応援できるようにした。ただし、経産省と文化庁の支援を両方申請するのではなく、経産省の支援メニューが使える方はそちらを利用してほしい。」  キュレーター(上映映画やライブの企画・選定などの担い手)の重要性を萩生田文科大臣は認めつつも、2問目と同様に経産省と文化庁の支援を両方は申請しないでほしいという答弁を繰り返している。 【4問目】 山添拓議員:「経産省の持続化補助金の支援内容は?梶山経産大臣:「5月にはオンライン配信設備導入など非対面型ビジネスに転換する場合は上限を100万円に引き上げ。5月以降も補助率を4分の3に引き上げ、施設消毒やアクリル板設置など業種別ガイドラインに沿った感染症対策を講じる場合は別枠で最大50万円を定額補助。さらにクラスター対策が必要なライブハウスを上限を50万円引き上げ、最大200万円の支援を可能とした」  萩生田文科大臣が経産省の支援を利用するようにと繰り返すので、その経産省の持続化補助金の内容を確認したところ、ライブハウスであれば最大200万円の支援が可能という前向きな答弁を引き出した。この5問目は最も具体的に前向きな支援内容が説明された答弁だったと思われる。ただし、これらの支援は感染防止策の実費支援である。損失の補償ではない【5問目】 山添拓議員:「4問目で説明して頂いた経産省による持続化補助金の追加支援内容は、あくまでも感染拡大防止策の実費の支援に過ぎない。文化庁の支援内容と重複しないので、両方(経産省、文化庁)の支援を受けても経産省として不都合は無いのでは?梶山経産大臣:「文部科学省とすり合わせて今後考えていく」  質問(両方の支援を受けても経産省として不都合は無いのでは)への回答は一言も確認できない。
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国費投入を渋る文化庁
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