あえて三密に飛び込んでしまう人々。「自分は大丈夫」の裏にある心理状態

異常事態が能力の過大評価を加速させる

混雑のイメージ

photo via Pexels

 「三密」を避けるために外出自粛令が出て3週間以上が経つ。世界中でコロナウイルスの拡散を防ぐために、ロックダウンや外出自粛が行われて、世界規模での外出制限(自粛)が行われている。  それにも関わらず、「私は大丈夫」という感覚で、三密全てを満たすような危険な場所へ行く人がいる。  例えば、巣鴨地蔵通り商店街で行われた縁日には、多くの人が集まっていた。現場の映像をニュースで見ると、マスクすらしていない人も多く見られる。  そのような行動をする人の頭のなかには、「私は大丈夫」という感覚がある。まるで、超人無敵のヒーローかのように自分の能力を過大評価してしまったり、あまりの異常事態に脳が正常な判断ができなくなっている可能性がある。こういった事態だからこそ、その人が持つ本性が行動に現れやすい。  今回は、「私は大丈夫」と考えさせてしまう心理作用や、心理バイアスについて解説する。

判断を鈍らせるさまざまなバイアス

①能力が低い人ほど、自分は大丈夫と考えてしまう  認知バイアスのひとつに「ダニング=クルーガー効果」というものがある。これは、「能力の低い人は自分の能力について、実際よりも高く評価してしまう」というものだ。この法則はビジネスの場だけでなく、コロナショック下の状態においても当てはまる。  この法則に当てはめると、「自分は大丈夫」と思ってマスクをつけない・三密へ出かける人は、ビジネスにおける能力は低いということになる。 ②異常事態への脳の処理オーバー(正常性バイアス)  心理バイアスのひとつで、「予想外の事態に直面したときに、都合の悪い情報は無視して『自分は大丈夫』と事態を過小評価してしまう」ものだ。  3・11のときにも、この正常性バイアスが問題になった。津波が自分たちの住まいに近づいているにも関わらず、事態を過小評価する正常性バイアスによって逃げ遅れてしまう人がいたのではないかと考えられている。  この正常性バイアスが発生してしまう理由は「怠け」「状況を甘く見てる」ではなく、脳の認知負荷が限界を超えてしまっているからなのだ。例えるなら、ある種のパニック防止機能である。  あまりの異常事態に、脳に様々な情報が入ってきて、何を変えるべきか、どう変えるべきか、変えることでどうなるかなどを考えすぎて脳に高負荷がかかってしまい、結局考えずに行動できる平常時の行動を取ってしまうのだ。
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あえて三密に向かってしまう心理とは
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