「ダイヤモンド・プリンセス」新型コロナ対応の時点から見えていた日本政府の”場当たり的対応”

安倍首相

「国民の命と安全を守る」が口癖の安倍首相だが、新型肺炎対策では後手後手で非医学的な対応を安倍政権は繰り返している

”国際標準”からかけ離れた安倍政権の新型コロナ対応

 後手後手で科学的根拠に欠ける安倍政権の新型コロナウイルス対応が続いている。 「早期発見(検査)・早期治療・早期隔離が大原則」(国民民主党の原口一博国対委員長)なのに、いまだに日本の検査数だけが他国に桁違いに少なく、数字に現れない形で感染が広がってオーバーシュート(爆発的患者急増)に至るリスクは日増しに高まっているのだ。  “国際標準”とは異なる日本特有の対応は、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で感染拡大をした時から既に始まっていた。「14日間隔離なしでの下船者帰宅」などについて海外メディアから批判が噴出したのはこのためだが、そんな中で船内の動画を投稿、驚くべき実態を告発したのが、神戸大学感染症内科の岩田健太郎教授だ(参照:”ダイヤモンド・プリンセス号船内に入った感染症の専門家の告発動画。現地記者からも裏付ける証言が”、”削除後も波紋を呼ぶ「岩田告発」。なんと現役厚生労働副大臣が船内ゾーニングの不備がよくわかる写真を投稿、後削除”|ともにHBOL)。  そして野党国会議員との電話会議(ヒアリング)では、米国疾病対策センター(CDC)のような感染症と対峙する専門機関が日本にはなく、専門家委員会が政権方針の追認組織のようになっていることを問題視、“日本版CDC”の創設を訴えてもいた。  安倍政権の対応のどこが問題で、どう改善していければいいのかをハッキリさせるためには、現場経験豊富で感染症対策の“国際標準”を知り尽くしている専門家の話を聞くのが最も有効に違いない。そこで、岩田氏と野党議員の電話会議内容を3回に分けて紹介していく。    

場当り的な対策しか打ち出せない安倍政権の“素人対応”

枝野幸男代表

安倍政権の新型肺炎対応を批判する枝野幸男代表

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の動画を投稿した感染症の専門家の岩田健太郎・神戸大学教授と、立憲民主党の枝野幸男代表の見方が一致、後手後手で場当り的な新型肺炎対策しか打ち出せない安倍政権の“素人対応”を浮き彫りにした。米国をはじめ他の国は下船乗員を14日間隔離したのに、日本政府はそのまま帰宅させてしまったのだ。  枝野代表が安倍政権の新型肺炎対応を批判的に語り始めたのは、衆院予算委員会での質問を終えた2月26日15時すぎ。囲み取材で約50分間の質疑応答を振り返った後、岩田氏も海外メディアも問題視した「14日間隔離なしでの下船」について筆者が質問、枝野代表も同じ見方をしていた。 ――クルーズ船を降りた方は海外では14日間隔離をしているのに日本ではそのまま帰してしまったことに対して、岩田教授は「おかしい」と言っているのですが、(枝野代表の質問に)加藤(勝信・厚労)大臣は「受入施設がなかった」と答えましたが、これ自体が問題ではないかと。(海外に比べて)感染症対策が遅れているような印象を受けましたが、どう受け止めましたか。 枝野代表:(加藤大臣は)従来から「受入先がない」という話は釈明されていたので、「14日間あったのではないか」と今日私は指摘をしました。もちろん当初から(船から)出た時の隔離は想定していなかったとしても、ある段階からは出た場合に感染拡大をしないような場に留まることを想定して準備をする時間は数日あったのは間違いありません。  そのことを指摘したわけですが、結局、従来の答弁を繰り返すだけで、実際にそういったことを真摯に検討してのかどうか自体、何も言わないということは、そういったことの検討すらせずに、「とにかく(船内から)出すのだ」ということしかなかったのだと言わざるを得ないと思います。 ――しかも、その船内が「(感染のリスクのあるレッドゾーンと安全なグリーンゾーンの)区別がなっていなかった」「船全体をレッドゾーンと見なすべきだ」という指摘が感染症のプロから出ているのにも無視して(乗客を自宅に)帰した責任は重いような気がします。 枝野代表:実際に自宅等に帰られた方の中から感染者が出たこと、それから「客室に留まってください」という事実上の隔離、船内隔離をした以降に(船内に)入られた厚生労働者などの皆さんが感染していること、つまり「船内にいれば感染が拡大しない」という前提は崩れていることは明確です。  どなたがどう言ったのか、船内の状況がどうだったのかに関係なく、「『2週間、船室の中におられた方は安全だ』というのは崩れている」のは明確だと思っていますが、そのこと自体を認めていないのでは、対応策を打ちようがありません。
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DP号対応は「科学的な対策はどうでもいい」という感じ
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